学校に行かない「ホームスクール」とは? 選択した親が語る理由と課題
英仏や豪、タイなど約50か国で認可・容認
取材に同席した同協会の日野公三理事長にも話を聞いた。 ――海外ではホームスクールをやっているんでしょうか 日野 米国が一番盛んですが、欧州やアジアでもホームスクールが認可・容認されている国・地域は多く、約50か国に上ります。フランスやイギリス、カナダ、オーストラリア、フィンランド、タイなどで盛んですね。一方、ドイツなどではまだ認められていません。 米国では1991年からすべての州で法的に認められ、ホームスクールを選択する人が90年代に急激に増加しました。米政府の統計では、全体の2.8%にあたる164万人超(2017年)がホームスクールで学んでいます。 もともと米国は、教育の基本は家庭にあるという考え方がベースにあります。家の単位で教育活動が行われてきた歴史が長く、その後に公教育をやってきた。公教育の質が悪ければ各家庭で質の担保をしてもいいということになっている。ただ、運用基準は州や、学区単位で違います。非常に厳しいところでは親が教員免許を持っていないといけないというところもありますが、1年に1回学校に顔を出せばよい、というところもあります。
「主体性が身につく」「学校によって対応が異なる」
――北本さんと佐々木さんにうかがいたい。ホームスクールの魅力と課題を教えてください 佐々木 自分の仕事で小学生と多く関わることがありますが、ホームスクールの子どもと比べると、学校に通う子どもは比較的受け身だと感じます。「次は何をしたらいい」とすぐに聞いてきます。ホームスクールの子どもはやりたいことをどんどんやっていく。主体性が身についている。「生きていく力」をつけられるのはホームスクールなのかなと思っています。 北本 うちの場合は学校が理解を示してくれていますが、知り合いの学校では、絶対不登校を許さないという姿勢で、子どもが行きたくないと言っても、厳しく来いといわれています。事例が自治体ごとに共有されておらず、義務教育という言葉が一人歩きしている部分があるのではないでしょうか。自治体同士で事例を共有し合うことは必要だと思います。また、先生や、教育現場に対して、子どもがホームスクールを選択して不登校になっても、学校の責任ではないと理解してもらいたいなと思います。 ――ホームスクールだと出席日数や在籍証明などができず、高校や大学などの進学で不利になるという意見もあるが 北本 たぶん、ホームスクーラーが日本の高校を選ぶことは考えづらいですし、通信制の高校も今はたくさんある。 佐々木 2005年には、文部科学省が、不登校の子どもでも、ITなどを活用した自宅学習を行っていれば出席扱いにできるという通知を出しました。文科省の要件を満たす教材を使って、実際に制度を利用している家庭もある。また、2017年には不登校の子どもへの支援の必要性を掲げた「教育機会確保法」も施行されました。風向きとしては追い風かなと思っています。