なにわ虎男子 阪神ドラフト5位・佐野大陽、独立Lではプロだけを意識してプレースタイル大幅変更
阪神の新入団選手にスポットをあてた連載「なにわ虎男子」の最終回。独立リーグ入りからわずか1年でプロ入りを果たしたドラフト5位・佐野大陽内野手(22)について、日本海L富山時代に監督として指導した吉岡雄二氏(53)=来季からヤクルト打撃コーチ=が語った。 日本海L富山に入団した佐野は、プロだけを意識してプレースタイルをがらりと変えた。「もう何でもいいから塁に出て、ヒットを打って、守備もしっかりやろうと」。粗削りだった守備を徹底的に鍛え上げ、打撃もパンチ力のある打撃から確実性を高めた。 吉岡監督は佐野の魅力について「妥協しないし、うまくなりたいという中で試行錯誤できる。技術的にも非常に実戦向きな選手」と語る。派手さはないが堅実な守備と、伸びしろを感じさせる打撃を高く評価していた。吉岡監督がリーグ戦中盤から1番に固定したことも奏功。打率・333と安定した成績を残し、プロから声がかかる選手にまで成長した。 独立リーグの厳しい環境にも負けなかった。少ない給料でやりくりしながら、体を大きくするために白米を食べ続けた。おかずが買えなくて、飽きてしまったこともあったが、そんなときは数カ月に一度は母・梓さんから届く手作りハンバーグなどのおかずで、またご飯を食べた。与えられた環境の中で努力を続け、わずか1年で勝ち取ったNPB。近鉄などでプロ通算883安打、131本塁打の成績を残した吉岡監督は「ぶれない強さがある。試合の雰囲気を変えてくれる選手というか、周りがワクワクするような期待感がある選手になってほしい。守備は二遊間を守ってくれたらうれしいですね」とエールを送った。ヤクルトの打撃コーチに就任することが決定している恩師と、1軍の舞台で顔を合わせる日が待ち遠しい。 佐野は5人きょうだいの長男。みんなお兄ちゃんのことが大好きだ。全員に名前に「陽」の字が使われており、プロ入りが決まって初めて作ったグラブにも「陽」を刻んで戦っていくことを決めた。 ドラフト指名されたときには静岡の実家でみんなからお祝いされた。梓さんは「今までで一番遠くに行っちゃうので心配ではあります。けがをせず、体に気をつけてやってほしい。小さい頃から言っていた夢をかなえたのだから、変に変わったりせず、そのままの大陽でいてほしい」と活躍を祈った。静岡に生まれた野球少年は、どんな時も諦めることなく泥臭く野球に取り組んできた。ようやくたどり着いたプロの舞台で、これからも愛する家族を、全国の虎党をプレーで喜ばせていく。(中屋友那)=おわり
■佐野 大陽(さの・たいよう)2002(平成14)年2月14日生まれ、22歳。静岡県出身。常葉大橘高では甲子園出場なし。中部大では全日本大学野球選手権大会に出場。日本海L富山に入団した今季は39試合出場、打率・333(リーグ2位)、0本塁打、19打点、出塁率・462(同1位)。25年D5位で阪神入団。契約金3500万円、年俸700万円。右投げ右打ち。178センチ、81キロ。背番号「45」