製薬会社が医師会理事長に「3,000万円超」を支払い…表沙汰になっていない「医療業界」の“裏金問題”【医師が告発】
いま、世間を騒がせている自民党の「裏金問題」。「パーティー券」をきっかけに勃発した献金がらみの話題はメディアでも盛んに取り上げられていますが、実は医療業界でもそうした「黒いうわさ」があると、医師の秋谷進氏はいいます。今回は、製薬会社と医療機関における“黒いウワサ”について、秋谷氏が解説します。 職業別「平均年収」ランキング<令和4年賃金構造基本統計調査>
製薬会社と医療機関の「金銭授受」が絶対NGな理由
前提として、製薬会社と医療機関のあいだで、金銭のやり取りは絶対にあってはなりません。 たとえば、 ・製薬会社Aがつくった薬のPR案件を受けたから、医療機関Bでこの薬を使おう ・製薬会社から“ぜひともわが社の薬を使ってほしい”とお金をもらったから、この薬を第一選択薬にしよう などということは、当然禁止されています。その理由は、主に以下の2つです。 1.利益相反を防止し、診療の「透明性の確保」をするため 「利益相反(COI:Conflict of Interest)」とは、ある行為によって一方が大きな利益を上げるとともに、もう一方への不利益になる行為※のことをいいます。 本来、診療行為とは中立の立場で行うものです。しかし、医師も人間ですから、製薬会社から多額の献金をもらえば、どうしてもその企業が扱っている薬を優遇したくなります。 効果や効能ではなく、個人的な利益や感情で薬を処方するようになれば、その薬が患者さんの命を救うためのものではなくなってしまいます。このようなことを繰り返すと「診療の透明性」の確保が難しくなり、本来あるべき診療行為からかけ離れたものになってしまうでしょう。 2.競争を“公正”に行うため また、製薬会社と医療機関のあいだの不適切な金銭授受は、製薬市場で「公正な競争」を損なう恐れがあります。 たとえば、製薬会社が多額の金銭を用いて大きなグループ病院※を抱き込むような戦略をとったとしましょう。すると、極端にその薬だけ処方数が伸びる現象が起きます。 この場合、臨床研究の際には「製薬会社で扱われる薬」を中心にデータが作られますから、“それ以外の薬”とデータ数に格差が生まれてしまいます。これでは、「本当にいい薬だから実績がある」のではなく、「たくさん医療機関にお金をばらまいたから実績がある」ことになります。研究の質も落ち、ひいては医療の発展も妨げられてしまうでしょう。 したがって、薬の未来のためにも「製薬会社と医療機関で金銭的な授受を行ってはいけない」のです。 そのため、各学会で行われるあらゆる研究や発表においては ・臨床研究において医療機関と製薬会社で金銭的な授受は行わない ・行った場合には、どのような金銭的な授受が行われたのかをきちんと研究に携わった人ごとに開示する という「利益相反(COI)の開示」が原則になっています。