【元宝塚トップスター・大空ゆうひさん】「退団後は出家を考えたほどでした(笑)」|美ST
―退団後は出家を考えたほどリハビリが必要だったそうですね。
大空:今となっては笑い話ですけど、出家したら迷いがすっきりするんじゃないかと(笑)。年齢的にも男役をやめて何をしたいのかわからなくなったんです。宝塚は限りがあるからこそ美しい世界だし、自分の引き際についてはまったく後悔はなかったけれど、追求してきたものが続けられない辛さがありました。歌舞伎の方々はずっと続けられて羨ましいな、と思いましたね。
―退団後初の舞台、蜷川幸雄さんの『唐版滝の白糸』では、鮮烈な印象を残されました。
大空:女優としての一歩を踏み出すにはハードルが高かったけれど、背中を押してくれました。いっぱい叱られて、必死でついていきました。蜷川さんが「これが女優としての誕生だから僕がお父ちゃんだ」と言ってくださって。宝塚時代、センターに立つことで鍛えられた芝居の体幹とともに、あの作品が今の私を作ってくれたと強く感じています。退団5年目には芸名も「祐飛」からひらがなに変えました。女優となった自分と歩んでいくにはもう少し柔らかい名前が合う気がして。
―最後に、大空さんにとって「美しく生きる」とは?
大空:俳優は生き方が演技に出ます。舞台では何も隠せない。「探求心」を持ち続けることが大切だと思うんです。新しい作品に出合うたびにできないことがどんどん出てきて、もがいて、探求し続ける。それが自分を活性化させてくれます。五感を瑞々しく保ちながら、新しい発見を続けていきたいと思っています。
年齢の重ね方は舞台に出る。瑞々しく五感を保ち、新しい発見を
小さなことにも目を向けて五感を研ぎ澄ませるために、ウォーキングしながら野鳥や植物の写真を撮りためるのが自分にとっての豊かな時間。その日の匂い、湿度、肌で感じられる感触などを大切に、いつも心を瑞々しく保つ。そんな探求する生き方が舞台にも表れるかなと思っています。 《衣装クレジット》 オールインワン¥108,900 コート¥124,300(ともにALYSI)ピアス¥13,640(chibi jewels JAPAN)ロングネックレス¥54,120(Mercedes Salazar/ZUTTOHOLIC)左ブレスレット¥14,520(chibi jewels JAPAN) 2024年『美ST』6月号掲載 撮影/八木淳(SIGNO)〈人物・静物〉ヘア・メーク/野林あい スタイリスト/SAKAI 取材/稲益智恵子 編集/石原晶子