園芸でリラックス! 「自然セラピー」を実生活に生かすには?
『趣味の園芸』2024年4月号の特集内「植物が身体を整える 『自然』で『自然に』リラックス」では、千葉大学の池井晴美先生に、自然と身体の関係について教えていただきました。ウェブだけで読める「こぼれ話」では、池井さんにさらに詳しくお話を伺います。 前編<森林を歩くと、血圧は下がる?上がる? 「自然セラピー」の最前線。>では、「森林セラピー」について具体的にお聞きしました。後編では、池井さんが実施する研究の将来展望についてお話しいただきます。
――ご研究テーマの「自然セラピー」を通して将来実現したいことはなんでしょうか。 前編でも申し上げたとおり、「自然が人を癒やす」ことは、経験的には知られているのですが、人の身体にもたらす生理的データは、少し前まで存在しなかったのです。そんななか、実験を重ねてデータを蓄積してきました。ある程度のデータがたまりつつあり、今後の「自然セラピー」の展望としては、「医療費の削減」への貢献を目指しています。
これまでの実験では、基本的に健常な方を対象にしていたのですが、脊髄損傷者、高齢リハビリ患者、依存症やうつ病患者などの日常的に高いストレス状態にある方を対象とした研究に力を入れ始めています。 たとえば、脊髄損傷者と高齢リハビリ患者を対象として、「ヒノキ盆栽」を見てもらう実験を行いました。その際、自分が盆栽の中にいると思って味わってもらいました。そうすると、もともと強いストレス状態にある方々だったこともあり、とても大きなリラックス効果が認められたのです。
――誌面ではバラの実験結果をご紹介いただきましたが、それよりも効果が大きかったと言えるのでしょうか。 高校生、オフィスワーカー、医療従事者らの健常な方を対象としたバラの実験と比べて、とても大きな効果が得られました。これは、バラよりも盆栽のほうがより大きなリラックス効果が得られるという意味ではなく、対象とした方の属性の違いによるものと思います。前編でもご紹介しましたが、私たちの身体は、自然に触れたとき、本来の「人としてのあるべき状態」に近づくと考えています。脊髄損傷者や高齢リハビリ患者は、日常的にストレス状態が高いため、健常な方と比べて、自然に触れたとき、より大きな効果が得られるのです。