大量閉店から奇跡の復活 クリスピークリームが「ドーナツ戦争」から勝ち抜けたワケ
人気商品「オリジナル・グレーズド」で一世を風靡(ふうび)したドーナツ専門店「クリスピー・クリーム・ドーナツ」(以下、クリスピークリーム)が奇跡の復活を遂げた。 【画像】クリスピークリームプレミアム北海道の「キタキツネカスタード」 2024年に入ってからは阪急大阪梅田駅(阪急三番街)、近鉄大阪阿部野橋駅(Time's Place あべの)、阪急西宮ガーデンズ、越谷レイクタウン、ららぽーとEXPOCITY、マルヤマクラスと関西を代表するターミナルや大型商業施設を中心に破竹の勢いで新規出店を進め、店舗数は史上最大となる74店舗となった。 2015年に大量閉店に踏み切ったクリスピークリームは、なぜ復活を果たしたのか――。そこには、時代に先駆けて顧客のニーズの変化をとらえた同社の姿があった。【筆者:淡川雄太(都市商業研究所)】
大量閉店の真相は……?
クリスピークリームは1937年にアメリカで創業したドーナツチェーン。日本国内では、2006年6月にロッテが主導となり日本法人「クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン」を設立し、同年12月に国内1号店となる「新宿サザンテラス店」を開店、日本上陸を果たした。 日本上陸当初は看板商品「オリジナル・グレーズド」の製造工程を楽しめる「ドーナツシアター」を各店舗で展開。焼き立てのオリジナル・グレーズドを示す「HOT OG」の看板や平日でも1時間を超える行列に並ぶ客へのドーナツの無料配布サービスがメディアで盛んに取り上げられ、競合店の2倍近い価格帯でありながら、順調に顧客の支持を獲得した。 クリスピークリームと同時期に参入した高価格ドーナツ店「ドーナッツプラント」「サザンメイドドーナツ」が運営会社の経営悪化により店舗数を大幅に減らし、コンビニドーナツもレジ横から姿を消した一方で、ロッテが親会社の日本法人は2015年に首都圏1都3県から、九州鹿児島まで64店舗体制となるなど店舗網を全国各地に拡大していた。 好調にみえたクリスピークリームであるが、地方店舗の多く(静岡・岡山倉敷・広島・博多・北九州・大分・鹿児島)は、設備投資や維持コストが高いドーナツ製造工場併設大型店であり、店舗近隣に複数の店舗を抱える状況でなければ持続可能な営業が困難な構造となっていた。 こうした決して効率的とはいえない営業体制の解消を目的に、2016年2月には京都府内・広島県内から撤退、2017年1月には旗艦店だった日本進出1号店「新宿サザンテラス店」を閉店、2018年10月には九州から撤退するなど、わずか2年で20店舗ほどを閉店した。 これにより、クリスピークリームは東名阪三大都市圏にいったん経営資源を集約したうえで立て直しを図ることとなった。