がんの「自由診療」を選択した人に待ち受ける治療効果以外の「思わぬ罠」
どこで診てもらうか、誰に診てもらうかで、文字通り運命が決まる。知っている人だけが幸せになれる、優れた医療の「条件」とはなにか―一流の医師たちが明かした。 【一覧】多くの芸能人が亡くなっている…注意すべきガン自由診療の言葉 前編記事『美容外科が、がん治療にまで進出──「免疫療法=最先端のがん治療」という闇の誤解』より続く。
保険適用の標準治療が一番
さらに、勝俣氏は「いいがん治療を受けたいのであれば、保険適用の標準治療が一番」と言う。 「標準と聞くと『並』という印象を受けるかもしれませんが、この『標準』というのは一般用語ではなく医学用語です。標準治療という言葉は、もともと英語のスタンダード・セラピーを日本語訳にしたもの。英語のスタンダードという言葉には、『一流の』『権威ある』『一番いい』という意味が入っていますから、標準治療というのは『最高の医療』ということなのです」 そうは言っても、がんは自分の命に関わる問題。藁にもすがりたい気持ちで、わずかな可能性を信じて自由診療を受ける人の気持ちもわかる。最後は自分の判断次第だが、治療効果以外にも思わぬ罠があるので注意したい。 「保険治療を受けながら、自由診療を受ける、いわゆる混合診療は厚生労働省が原則禁止としています。もし混合診療を行った場合、保険診療の部分も自由診療扱いになり、全体が自由診療として整理されます」(若尾氏) たとえば、ある病院でがんの保険診療を受けた後、別のクリニックで自由診療を受けたとする。その後、もう一度病院に戻って保険治療を受けたとしても、それは混合診療扱いになり、たとえ保険適用の治療であっても自費扱いになる。さらに、自由診療を受ける以前の保険治療までも自費扱いとなり、治療の内容によっては巨額の負担となりかねない。
「日本未承認薬」という手
それでも標準治療で打つ手がなく、どうしても自由診療の選択肢を探したいなら、なるべく効果が期待できるものを選びたい。検討に値するのが、「日本未承認薬」だ。海外ではすでに使われているが、日本ではまだ承認されていないクスリを利用するのである。 米国アラバマ大学バーミンハム校助教授でがん研究者の大須賀覚氏が解説する。 「海外では承認されていても、日本での臨床研究が実施されていなかったり、製薬会社が日本で販売をしていなかったりと、日本では承認されていないクスリはいくつかあります。高価ではあるものの、海外でのエビデンスがありますので期待ができます。 こうしたクスリは医薬品医療機器総合機構のサイトにまとめられています。しかし、高度な内容なので、自分で判断せず、必ずかかりつけの医師に相談してください。クスリの入手方法も医師に相談しましょう。がん患者が集う患者会でも、こうした情報交換がされているケースもあります」 もう一つ、自由診療でも東洋医学などをうまく使えば、がんの根治はできなくとも、治療による副作用を抑えられるかもしれない。昭和大学医学部教授の砂川正隆氏が解説する。 「抗がん剤の副作用による痛みのほか、放射線治療によって口内炎ができてしまうケースもあります。こうした副作用に対して、疼痛緩和に効く、牛車腎気丸、芍薬甘草湯、抑肝散、桂枝加朮附湯や、口内炎には半夏瀉心湯などの漢方薬が一般的によく使われています」