今どきまっとうなアウトドア本 vol.12『TRANSIT No.58 ~春夏秋冬フィンランドに恋して~』
アウトドアシーンでは「現場」で色々なことが起こります。だからこそ、知識を得てから出かけることは役に立つし、何より楽しい。フィールドから帰ってきて復習するもまた良し。この連載では、そんな場面で活躍する本を古今東西問わずに取り上げます。 【写真】『TRANSIT 58号』フィンランド特集の誌面を見る(全4枚) 歴史やカルチャーなどいろいろな切り口で深掘りした記事がちりばめられている『TRANSIT』から、アウトドア好きな国民性でも知られる、フィンランドの特集号を取り上げます。
本当の幸せはフィンランドにある?
北欧の一部で、美しい森と湖と白夜の国。ムーミンとマリメッコを生み出した国。 本書に触れるまで、筆者にはその程度の知識しかなかったのですが、『TRANSIT 58号』特集「春夏秋冬 フィンランドに恋して」を読んで、すっかりフィンランドに恋してしまったかも……。この雑誌は、旅心を刺激することにおいては、右に出るものがない存在ではないかと思います。 大扉ページのテキストは1行だけ。 「幸せってこういうこと。」 そして、一枚の写真。 木々の緑のすきまから覗いているのは、湖畔(海辺?)で、人々がねそべって、のんびりとくつろぐ姿。 なんだ、このゆるっとした、気持ちよさそうな風景は……。 これが、「世界一幸せな国」※と言われるフィンランド? まずは目次を開いてみます。 「森にでかければ」 「白夜の光を追いかけて」 「サウナ巡礼の旅」 「冬のトレイルを歩く」 …アウトドア好きの心をわしづかみにするコンテンツがずらり。 『TRANSIT』らしい多彩な切り口で、フィンランドのいろんな顔が紹介されていて、自分の中の「行ってみたい国」ランキングの上位に躍り出そうな勢いでした。
高緯度にある国土の実態と幸福度が高い国民性とは
特集ページによると、“スケールが桁違いのでっかい自然”があるフィンランドでは、森に入れば美味しいキノコやベリーがたくさんあって、湖水には美味しい魚がたくさん。オーロラが見られるのも魅力です。 国土の広さは日本とあまり変わらないものの、森林面積は75%と、ヨーロッパでも屈指の森林王国だそうです。41か所もの国立公園があり、湖は「少なくとも18万以上」、島の数も18万以上あるとか。 「フィンランド人の生態大解剖」の章によると、 多数派であるフィン系の人々は、ほかの北欧やヨーロッパ諸国とは異なるルーツを持ち、北ロシアや西シベリアと同じウラル諸語という言語だそう。少数派には、ラップランドに古くから暮らしてきたヨーロッパで唯一の先住民族サーミもいます。 また、寒い国でありながら、人々は平均すると週に3日も野外活動をしていること。自然を愛する人が多く、休日には近くの森へ出かけて、野生のベリーを摘んだり、きのこを探したりするのが一般的だそうです。 「すこし遠くにある、お気に入りの町へ ローカルトリップのアイデア帳」、「冬のトレイルを歩く」 など、具体的な旅を提案するページがとくに興味深く、本場でフィンランドサウナを体験した5人の日本人の体験記など、親近感がわく記事も。 そのすぐ後ろに、紛争の真っ最中であるロシアの隣国であるフィンランドのリアルな状況を伝える「ロシア国境のいま」を配するあたりが『TRANSIT』らしい公正さなのかなぁとも思います。こういった事情も踏まえつつ、誰かフィンランドのトレッキング事情の取材とか、ご依頼いただけませんか?行ってみたいなぁ。
根岸真理