規正法採決巡り攻防激化 野党、首相に解散要求 麻生派議員、公然と退陣論〔深層探訪〕
今国会会期末まで1週間を切り、与野党の攻防が激化した。自民党は派閥裏金事件を受けた政治資金規正法改正案を19日にも成立させたい考えだが、立憲民主党などは欠陥法案だと批判を強め、内閣不信任決議案提出をちらつかせて岸田文雄首相(自民総裁)に衆院解散を迫る。自民内からも首相の退陣論が噴出し、政権の足元はぐらついている。 【図解】政治資金規正法改正・自民案の主な検討課題 ◇「ざる法で邪道」 「中身は『ざる法』で、プロセスは邪道。国民に信を問うべきだ」。17日、衆院決算行政監視委員会で質問に立った立民の野田佳彦元首相は、自民の規正法改正案は極めて不十分だとして、解散で国民の審判を仰ぐよう首相に要求した。 自民の改正案提出が遅れた結果、国会審議が深まらなかったとみる野田氏は「常に矮小(わいしょう)化して乗り切ろうとする意思を感じる」と首相の姿勢を問題視。野党との修正協議に再度応じ、実効性のある改正を目指すよう求めた。 首相は「各党の意見は今後も丁寧に聞く」などと低姿勢で応じたが、実際の動きは裏腹だ。自民はこの日、改正案を18日に参院政治改革特別委員会で採決する日程を提案。「抜け穴だらけ」(立民の青柳陽一郎氏)などの批判には耳を貸さず、裏金事件の幕引きを図る姿勢を強めている。 「与党としてみれば十分な答弁もできている。しっかり会期内に仕上げたい」。自民の石井準一参院国対委員長は17日、記者団にこう強調した。 ◇波乱要素 立民は岸田政権下で初となる19日の党首討論を今国会最大のヤマ場と位置付けており、内閣不信任案を「武器」に首相を追い込みたい考えだ。泉健太代表は16日、横浜市で記者団に「(自民の)政治改革案は落第点だ。(首相の答弁)次第で不信任案を検討したい。解散を迫る」と断言した。 国会最終盤には波乱要素もちらつく。首相は改正案の衆院審議の段階で、公明党と日本維新の会の修正要求を受け入れて両党の協力を取り付けたが、維新は調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)改革の先送りは合意違反だと反発。音喜多駿政調会長は17日の参院特別委で「うそをつくなら(改正案)賛成はあり得ない。内閣不信任案(採決)にも厳しい姿勢で臨む」と言い切った。 ◇自民動揺 「国会も大詰めだ。規正法改正案や提出法案の成立を期す」。野党の攻勢にさらされる首相は17日の自民役員会で、国会会期末に向けて党執行部の結束を改めて呼び掛けた。しかし、やまない世論の逆風に自民内には動揺が広がっている。 野党が政権批判を強める中、報道各社の内閣支持率の下落に歯止めがかからない。麻生派の斎藤洋明元総務政務官は16日、新潟県新発田市での会合で「こうなったら誰かが責任を取らなければならない。リーダーの責任も大いに議論されるべきだ」と「首相退陣」の必要性に踏み込んだ。 会合には首相との関係悪化がささやかれる麻生太郎副総裁も出席していた。斎藤氏の発言は麻生氏の退席後だったが、麻生氏の意向を踏まえた動きとの見方が少なくない。自民が各地で続ける政治刷新車座対話では地方議員らから退陣論が相次いでおり、麻生派中堅は「誰でも思っている。そういう空気だ」と冷ややかに語った。