コンビ歴25年。麒麟“じゃないほう”だった川島明を支えてくれた大喜利
『M-1グランプリ』決勝進出5回という漫才師としての確かな実歴に加え、MC・トーク・大喜利など、芸人としての全ての力を兼ね備える令和のオールラウンダー、麒麟・川島明。「麒麟」というコンビにフォーカスを当てながら、川島の土壇場だった頃について聞いた。 【インタビュー写真】俺のクランチ-川島明-(撮影:松林満美) ◇炎上の匂いがしたらちょっと砂糖をまぶします どんな仕事もそつなくこなすように見える川島。MC仕事で緊張することはないのだろうか? 「今はないですね。これまで、特番のMCなんかでは“ゲストが不愉快にならないように”とか、“さんまさんとか島田紳助さんのいいところはこうで……”とか、いろいろ考えながらやってたんです。でも、毎日となると、そんなん無理で。『ラヴィット!』が始まってから他の人のMCを見てたら、皆そんなことを考えずに勝手に色が出てるってことに気づいたんです。 内村(光良)さんは居るだけで空間を和やかにしてるし、加藤(浩次)さんは自分でドリブルしていくスタイル。今田(耕司)さんはその両方のバランスで……とか、もちろん皆さん努力はされてるけど、たぶん“こうなろう”と思ってなったんじゃなくて、“人間そのもの”で仕切ってはんねんなって。それに気づけた今は緊張せずにできてます」 そんな川島のドンと構えた自然体が周囲にも安心感を与えているのだろう、『ラヴィット!』では自由奔放な出演者の言動も見どころの一つとなっている。しかし、SNSが普及した昨今、些細なことでもネット炎上につながりやすい。炎上を回避するための、MCとしての立ち回り方を教えてくれた。 「生放送っていうのもあって、話題狙いでガンガンくる人もいますからね。(相席スタート)山添くんとか、(さらば青春の光)森田くんとか(笑)。それを本気で受け取っちゃう人もたまにいるから、“これなんかちょっと危ないぞ”って感じたときは、そういう人もいるけどね、個人の感想ね、とか。ちょっと砂糖まぶすような感じのひと言を、ボソッと言うようにはしてるかな。 明らかに行き過ぎてると感じたときは、先に僕が怒ったフリをして、周りが“もうコイツのこと許してやってください”って雰囲気になるようにしてますね」 フォローにまわる機会も多い川島、当の本人は炎上とは無縁のイメージがある。そのバランス感覚はどのようにして磨かれていったのだろうか。 「う~ん……自分ですごく意識して気をつけたりとかはないです。確かにあんまり(自分の炎上は)ないですけど、それはたぶん、基本的に芸能ニュースとかに全く興味ないタイプやから、いらんこと言わないってだけかもですね(笑)。 SNSもほぼ告知しかしてないし。今、X(旧Twitter)でいらんこと言うて変なことになる人が多いから、そんな真剣にやらんでもええのにな、とは思っちゃうんですよね」 ◇楽しかった6年ぶりのトークライブ 個人での活動が多いなか、昨年9月に、6年ぶりとなる麒麟トークライブ『ふたりっきりん』を開催。このライブにファンは驚きと喜びに満たされ、大きな話題となった。 「そもそも、コンビでトークライブをやることに対して、周りがめちゃくちゃビックリしてることにビックリしたんですよ。6年間、二人でトークっていうことがあんまりなかったからなんやろうけど、“コンビでライブやるんですか!?”って言われても、当たり前やろって(笑)」 以降、半年に一回のペースで開催され、今年の9月28日には第3回目が開催される。川島にとって、数ある仕事のなかで“続けていきたい仕事”だと思えたのだろうか。 「そうですね。ちょっと田村を養っていかないと……っていうのは冗談ですけど。テレビで僕のことを知ってくれている人のなかには、なんで僕が『“麒麟の”川島です』って言ってるのか知らん子どももいますし、“相方の田村もおもろいな”と思ってもらえたら一番うれしいんです。 それと、若い頃は単独ライブでもDVDになるようなネタばっかりやってて、それはそれでよかったんですけど、今はちょっと一息入れたようなライブなんですよね。それを、お客さんもゆったり聞いてくれる空間だったのがうれしくて、ついエンディングで“定期的にやる?”って一言漏れました。 せっかくやったのに、また6年空くのはイヤやなと思って。半年に1回っていうペースは、田村がそれくらいのペースでやりたいと言ったからです。二人とも単純に楽しかったんでしょうね」 結成当初から麒麟のネタを書いている川島。『ふたりっきりん』をはじめ、どんな仕事も手を抜かないという彼のスタイルが、ファンの満足度にもつながっているのだろう。本ライブはどのくらい準備をして挑んだのだろうか? 「田村はゼロですね。初回ですら“嘘やろ!? コイツ、なんのトークも用意してきてないやん”と思いました。漫才も、あいつが大阪に住んでるというのもあって、当日しか合わせてないんですよ。2~3日くらい前に僕がメールでネタを送りました。 そもそも、このトークライブって田村が“コンビでやりたい”と言って始まったのに、結局、僕が会場を押さえて、お客さんの声を取り入れながら開演時間も考えて、せっかくやしサプライズで新ネタも1本入れて漫才師ってことを伝えたいなとか……構成も全部決めてるんですよ? あいつは出囃子だけ“これがいい”って要望出してきたんですけど、配信あるからそれも使えへんねん(笑)。 でも、昔からそういうバランスのコンビなんで、別に“あいつなんもやらへん”とかいうことでもないんですよ。僕がやりたがりっていうところもあるんでね」