コンビ歴25年。麒麟“じゃないほう”だった川島明を支えてくれた大喜利
◇麒麟は他のコンビと違って特殊な関係 個々での活躍のイメージが定着している今、改めて麒麟のバランス感に着目したい。我々は今、このコンビの関係性をどう捉えるのが正解なのだろうか。 「うちのコンビって、他のコンビと違って特殊な関係やと思うんです。トークライブの出だしが“最近……どうですか?”って、どんなコンビやねんっていう(笑)。でも、そこから徐々に友達に戻っていく感じが僕はおもろいなと思ってるんで、今回もそれでいいんじゃないかなと。なんやったら、そのために楽屋も別にしてますし。だから、その辺の違和感をお客さんにも楽しんでほしいですね。 ライブ終わりに、ちょっとした感想を喋ったりするんですけど、それも久々で楽しいんですよ。でも、半年でまた関係性も戻るんです。なので次も、田村が僕に対して敬語になるところから始まります(笑)。それと今は、年齢が年齢なんでお互い妬みもなんもないので、この感じもいいのかなと」 コンビ歴25年にも関わらず違和感を楽しんでもらいたいというのは、まさに特殊な関係性だ。相方以外とタッグを組んで仕事をすることも多い川島だが、田村との相性についてはどう考えているのか。 「いやぁ~、呼吸は合わないんじゃないですかねぇ? 僕は辛気臭い男で、アイツはクラスのど真ん中にいるタイプの太陽みたいに明るい男ですから。このトークライブでも、僕の場合は仕事の関係者が見に来てくれてたんですけど、かたや田村は自分の英語の先生を呼んでたんですよ、楽屋に『ハロ~』って。いやプライベート過ぎるやろ、マジで友達呼んでるやんって(笑)。 でも、コンビ組んだときから、その真逆さがいいのかなと思っていて。そもそも、やりやすい・やりにくいとかではない状態からスタートしてるんです。僕は田村としかコンビを組んだことがないから。家族と一緒におって“うちのおかん、ええわ~”とか“おとん、やりにくいわ~”とかって考えながら過ごすわけじゃない。それに似た次元なのかもしれないです」 ◇今は夢が叶ってる途中という感じ 今年7月に発売された、田村の著書『ホームレス中学生』(小社刊)の新装版に、川島は帯文を寄稿した。「タダでやってますからねぇ」と笑いながら話すが、この本が大ヒットした17年前が、川島にとって一番しんどかった時期だと振り返る。“じゃないほう芸人”として扱われた土壇場から、いかにして抜け出したのだろうか。 「あの当時は、『フットンダ』『ゴッドタン』『アメトーーク!』が呼んでくれて、それが本当に助けになってました。特に『フットンダ』には支えてもらいましたね。僕にまだ大喜利のイメージがない時期だったのに、麒麟で出たときの1回を見て定期的に呼んでくれるようになって。 そこから準レギュラーにしてくれて、すごく愛を感じました。タカアンドトシさんが、いろんなところで“あいつ、大喜利おもろいぞ”と言ってくれたのがデカかったですね」 多岐にわたり活躍する川島は、どのジャンルの現場であろうとも言葉の節々から知識量の多さが窺える。 「知ってることを大きい声で言ってるだけなんで、知識量はどうなんやろな?って感じなんですよ。例えば、僕人生で1回も『ハリー・ポッター』を見たことないんですけど、6回ぐらい読み直してる『こち亀』のことはめっちゃ喋ってる。そうすると、なんとなくのイメージで“アイツはたぶん、ハリー・ポッターも見てるやろ”みたいになるんですよ(笑)」 そうは言うものの、芸歴問わず面白いと思う芸人の活動は欠かさずチェックし、お笑い賞レースに関しては予選から見る徹底ぶり。『川島・山内のマンガ沼』では毎週のようにオススメ漫画を紹介し、『サンデーPUSHスポーツ』ではスポーツの話題に触れ、休日は番組で紹介された飲食店に自ら足を運ぶこともしばしば。つい“川島の努力”を探ろうと、情報収集のコツを尋ねてみた。 「好きなことは仕事にしつつ、知らんことまで手をつけて仕事しないようにしてますね。何か調べるにしても、“好き”から突破口を考えてるんです。知らないジャンルがあったら、まずは1組だけ推しを作るようにしてて。 例えば、僕は韓国アイドルに詳しくないんやけど、(G)I-DLEっていうグループの1曲だけ、たまたまめっちゃ好きやったんですよ。だから、その子たちをYouTubeで見るようにしてたら、韓国アイドルの内情とかが自然と見えてきたり。野球も、巨人が好きになって毎日楽しく追ってたら、自ずと対戦相手のこともわかるようになってきて。 “別に勉強したくないけどな”って思いながら頭に入れても、その仕事が終わったら忘れちゃうと思うし、やっぱり好きなことしか頭に残らないんで。だから、いきなり教科書を読むんじゃなくて、“これめっちゃ好きやな”から、ぼんやり周りが光っていく感じの勉強なのかな」 『そもそもの話』(2024年4月・銀シャリ橋本ゲスト回)では、橋本から今後のキャリアプランについて問われた際「考えたことがない」と言い切っていたのも印象的だった。最後に、今もその気持ちに変わりないのかを問う。 「いやぁ、ないねんなぁ。本当にありがたい話、仕事で“こんなんやりたいな”と思ったら、そういうオファーをいただけることが多いんです。夢が叶ってる途中という感じだから、その質問には“ない”って答えになっちゃうんですよね。 やる気がないってことじゃなくて、幸せですという意味合いの“ない”です。忙しくて倒れるんちゃうかって心配の声をかけてもらうことも多いんですけど、心のしんどさみたいなものは本当に全くないんですよ。今、本当にすごくバランスが良くて、どの仕事も楽しいんです」 「知之者不如好之者、好之者不如樂之者」という孔子の言葉がある。“楽しむ者には勝てない”という意味だ。努力を努力と思わず楽しんでいる川島は、まさに無敵状態。これからも、“楽しむ川島”に、我々も楽しませてもらえることだろう。 (取材:佐々木 笑)
NewsCrunch編集部