海外メディアは世界陸連の「厚底シューズ」一部容認、一部禁止の決定をどう評価したか?「批判を静めることができない」
「全面禁止見送り」のスクープを書いた英国のガーディアン紙は、「世界陸連は、陸上競技に革命をもたらしているハイテクのナイキ・ヴェイパーフライシューズに承認の印を与えたが、未来のテクノロジーについては制限を設けた」と厚底シューズに関する新ルール発表を伝えた。 世界陸連の発表内容を伝える中で「世界陸連の決定は、ナイキのスポンサーを受けて衝撃を与える記録を生み出してきたアスリートに不公平な有利性をもたらすとして、”シューズはテクノロジーのドーピングに等しい”と考える人々の批判のすべてを静めることにならならないだろう」と指摘。 元五輪選手で現在は、トップコーチの1人であるマット・イェーツ氏の「新しい規制は過小すぎる。世界陸連が静観して何もしない間にナイキがルールを破ることを許されたため、選手たちは、メダルや資金や財政的援助を失ってしまった。これはドーピングと同じで、単純に不正だ」という「厚底シューズ」への批判的なコメントを掲載した。 スポーツイラストレイテッド誌は、「明るい緑とピンクの色合いでレース中に容易に確認できるナイキのヴェイパーフライシューズは、米国五輪マラソン選考会やその時のリオデジャネイロの五輪で提供を受けた選手たちが、そのプロトタイプを着用して競技に出場した2016年にさかのぼって論議の中心となってきた」と紹介。 「このシューズは、アトランタで2月29日に行われる米国五輪マラソン選考会までを目標に追随できるようにと、サッカニー、アシックス、ブルックス、ニューバランス、ホカオネオネといった他社の製造競争を招いた。サッカニー、ブルックス、ホカは現在、カーボンファイバープレートを埋め込んだシューズを売り出している。これらの会社は東京五輪で使用できるように商品の一般販売を急がされることになるかもしれない」と”シューズ戦争”に注目した。 また禁止される「アルファフライ」についても触れ、「このシューズはテスト試用として米国内のレースでもも目立っている。45歳で5度目の五輪チーム入りを狙うバーナード・ラガトら米国マラソン候補選手の間でも使用されている。だが、新しい規則の中で、ナイキのアルファフライは、一般市場で販売されておらず、世界陸連のガイドラインにも沿わないために米国の五輪選考会では着用を許されない」と早くも競技に影響が出てくることを伝えた。 また「新ルールはナイキがこの春か夏に発表する可能性のあった新しいトラック競技用スパイクにも影響をもたらすかもしれない。アルファフライとほぼ同じように、そのプロトタイプは、バネの効力をもたらす空気袋があることがオンライン上で見られている」とナイキの新製品について明かした。 記事は最後に「世界陸連の新規定は足を使う競技を混乱させてきたメーカーの開発競争を制限する一歩となるが、シューズというものは規制を実施することよりも複雑なものだ。ただ、今回、規定が定義されたためにシューズ革新の次のステップは、世界陸連の制約内で個々のランナーのためにシューズの能率を上げる努力が行われることになる」と記した。 東京五輪前に一件落着した厚底シューズ騒動だが、議論はまだまだ終わりそうになさそうだ。