〈ホス狂は病気か?〉「薬は効かない。必要なのは我慢と根気そして…」回復施設を運営し、これまで500人のホスト依存症患者を治療した医師が“ホス狂”とその家族に伝えたいこと
新宿・歌舞伎町にあるホストクラブ約200店舗は、今年4月から売掛制度(ツケ払い)を撤廃した。全国的にも悪質なホストクラブの取り締まりが強化されている一方で、新たな手口も次々と出現しており、被害は減らない状況にある。依存症治療専門機関「大石クリニック」の大石雅之院長は「ホストクラブの規制も重要だが、それだけでは被害にあった女性たちは救えない」と指摘する。全国的にも珍しい“ホスト依存外来”に訪れる女性たちの特性や、万が一、自分の子どもがホストにハマってしまったときの対応策などを聞いた。 ホストにハマり借金は5000万円まで膨れ上がった…グループホームで過ごす元ホスト依存症の女性に密着
売春すればお金が稼げてしまうため歯止めが利かなくなった
アルコールや薬物、ギャンブル依存などを専門的に治療する医療機関は数多く存在するが、神奈川県横浜市にある「大石クリニック」は、ホストに依存する女性患者、またはその親が訪れる外来棟をはじめ、「回復施設」と称したグループホームなどの施設を複数展開している。 同クリニックの大石雅之院長は、ホストに強く依存してしまい、自らの衝動を抑えられない「強迫的性行動症」と診断された500人以上の患者の治療にあたってきた。 ――俗にいう“ホス狂”の診断名である「強迫的性行動症」とは、どんな病気なのでしょうか。 大石雅之院長(以下同) 医学界では、世界保健機関(WHO)が病気を分類して初めて病名がつきます。2018年6月にこの国際疾病分類が最新版(ICD-11)へと改訂され、ホスト依存は「性嗜好障害・強迫的性行動症(性依存)」という病名になりました。 この病気は、芸能人やスポーツ選手によるセックス依存や度重なる浮気行為が報道されたことで昨今話題になりましたが、端的に言うと「やめたいのに性的行動が抑制できなくなる」という状態の一種です。 従来は男性の風俗やキャバクラ依存が目立っていましたが、もちろん女性にも生じることがあります。その一つが、近年問題となっている“ホス狂”です。 ――ホストクラブは50年以上前から存在していますが、なぜ昨今になって、悪質な売掛金による女性の性的搾取が社会問題にまで発展したのでしょう。 私の知る限り、30年ほど前にも「娘がホストにハマった」というケースはありました。なので、これまでも闇に消えていただけで、同じような問題は存在していたはずです。 当時との大きな違いとしては、現在はお金のない若い子でも、パパ活や交際クラブといった風俗以外の手段で気軽に稼げるようになってしまい、それにホストが便乗する図式が出来上がったことが挙げられます。 社会性がなくても、売春すればお金を稼げてしまうため、歯止めが利かなくなってしまいます。 ――こちらのクリニックには、ホスト依存になってしまった患者本人が1人で診察に来るのでしょうか? 多くの場合は、患者の親だけが来たり、ホストに捨てられ傷ついた状態の娘さんが親と一緒に来たりしますね。 本人が来るとしても、かつてホストクラブに通っていた子が、次は薬物依存になっていたり、市販薬をOD(オーバードーズ)して精神病院に入退院を繰り返したりしたあとに訪れてくるケースがほとんどです。