<春に挑む・’23センバツ海星>/下 各自の長所伸ばす 「最弱」からの成長 /長崎
2022年秋の九州地区大会で4強入りし、センバツの切符をつかんだ海星。だが、その1年前、現在の2年生は1年生大会で初戦敗退し、「最弱の世代」と呼ばれた。 20年秋の1年生大会では現3年生が全県優勝。現2年も21年10月16日にあった1年生大会初戦は「勝って当たり前」と思われていた。しかし、その試合は長崎工に1―10でまさかの七回コールド負け。岩永大吾選手(2年)は「海星野球部の歴史を壊してしまった」、田川一心主将(同)は「情けなかった」と振り返る。 22年夏の甲子園で16強入りした現3年生と比べ、2年生は「飛び抜けて目立つ選手がいない」と加藤慶二監督(48)は話す。「最弱」からはい上がるため、2年生が取り組んだのは各自の長所を伸ばすことだった。 外野手の山口頼愛(らいあ)選手(2年)は、50メートルを6・1秒で走る俊足を生かし、盗塁を磨いた。「自分がチームに貢献するにはどうしたらいいか。盗塁で相手にプレッシャーを与えられれば、攻撃の幅も広がる」と考え、プロ野球などの動画を見て盗塁のイメージトレーニングを繰り返した。22年秋の県大会、九州地区大会の8試合でチーム最多の5盗塁を決め、得点機を作った。 内野手の峯蒼一郎選手(同)は守備力を磨いた。素直な性格を生かして先輩のプレーを見習い、後輩にも教えを請うて力を伸ばし、加藤監督から「守りの要」と信頼されるまでになった。次の課題は打撃で、遊撃手の座を争う永田晃庄選手(1年)から打席での間の取り方などを教わっている。 投手陣は左の吉田翔投手(2年)と、右の高野颯波(そな)投手(同)が「ダブルエース」と呼ばれるまでに成長。吉田投手は緩急と制球力、高野投手は直球の切れと変化球が武器で、両投手とも精神力が強い。 外野手の角野夢才志(むさし)選手(同)は「2年生は弱いことを自覚して『これ以上負けたくない』という危機感を常に持っている。『最弱』から上を目指す中でたどり着いた『泥臭い野球』で勝ち進んできた」と話す。 この2年生に、成長著しい1年生の力が合わさり、チーム力を高めてきた。加藤監督は「打撃力のある1年生が伸び伸びと力を発揮できるのは、2年生が守備などで粘り強く踏ん張るから。『最弱』からの成長ぶりは計り知れない」と目を細める。 田川主将は「苦しいスタートからここまで成長したことは自信につながった。センバツ出場に満足せず、全国制覇を狙いたい」と意気込む。【松本美緒】 〔長崎版〕