STATION Ai開業! アトツギベンチャーが語る「共創」と「組織づくり」のカギ
「自律的組織」への転換のリアル
督:次のトークテーマは『アイデアが生まれる組織づくりの鍵』です。側島製罐では自律的組織への転換を掲げて、決済や、ご自身の社長という肩書きをなくしたり、給与を従業員自身が決める「自己申告型給与制度」が注目されていますよね。 石川:うちの会社では、翌年の給料は社員が自分で宣言します。会社は先行投資をするという形態です。役職もありません。自分が何をやりたいか、それをやるためにはこれくらいお金が欲しいと決めて、絶対評価で自分自身を評価します。 岩田:例えば地道であまり押しの強くない人と、少し雑だけどやる気があって高い給料を提示してくる人をどう判断するのでしょう? 石川:投資するにあたって「投資決定委員会」が各自の申告を見て、内容を精査します。ただ、それが妥当かどうか判断してしまうと評価になってしまうため、あくまでも委員会はサポートチームという立場で、本人の希望額を叶えるには、何をやれば良いのか、どんな力を発揮できたら良いかなど、ポジティブな提案をしています。 実は自分で希望額を下げる人もいます。前年投資してもらったけど、自分の力不足を痛感して、もう少しスモールステップでやっていきたいと。 迫田:自己申告型給与制度と聞いて好き勝手できると勘違いしてきた人が、実際に入社してみて不満を持つことはないのでしょうか? 石川:あります。どれだけ入社前に説明しても、キラキラワードに見えてしまいますから。4年半かけて組織作りをしてきました。自由を謳歌できる環境ですが、その責任は自分で取らなければならないので、自分で考えて動かなければならない難しさがあります。岩田さんのところでは、TAKIBI&COの運営も社員さんたちがやっていますよね。 ■地域特有の手堅さと、柔らかい文化の融合 岩田:TAKIBI&COでは「何がやりたいのか」というベースと、「何ができるのか」ということのすり合わせを今進めています。「ひつじサミット尾州」というオープンファクトリーイベントを4年やっていますが、これが自社の企業文化の醸成に繋がっているのではと、気づき始めたところです。 メーカーなので企業風土は硬い方だと思います。経営面で手堅さも重要ですが、何かをやろうとすると承認が必要だったり、石橋を叩いても渡らなかったり、それでは新しいチャレンジは生まれません。まして自立性なんて育めるわけがありません。年に一回、オープンファクトリーという通常業務とは違うお祭りのようなことをやる中で、お客様に自分たちの技術をいかに説明するかを考えたり、来場されたお客様に毛糸を販売してみようと提案するなど、ようやく社員が自ら動いてくれるようになりました。愛知の製造業のカチカチに硬い文化の中に、柔らかい文化が少しずつ広がってきているのではと感じて、ワクワクしています。 迫田:当社も先代からの社員が約7割。離職率も低く、ほとんど固定メンバーでやってきています。しかもずっとトップダウンで。そこで私自身がtoCの世界を開いたことで、社内のみんなの意識が少し変わり、風土も変わったと感じています。今後さらに変えてくれるのは新しく入ってくるメンバーです。そのためにも会社の魅力を作っていかなければなりません。小さな会社ですが、中国やタイなど、海外5カ国に拠点を持っています。国内外の優秀な人に入社してもらいたいと採用活動を行っていますが、ありがたいことに、こちらからアプローチはしていません。本当に当社で働きたいと思っている人と少しずつ距離感を縮めて採用するというプロセスを大事にしています。
Forbes JAPAN 編集部