STATION Ai開業! アトツギベンチャーが語る「共創」と「組織づくり」のカギ
商品のコラボを作る上で課題になるものは?
督:スタートアップ業界だけでは生まれにくい雰囲気を、いろいろな業界の人がクロッシングすることで、新しい発想の場が生まれているように感じます。 迫田さんは、「MUQU」というゴルフクラブのブランドを展開されていますが、このブランドでは愛知県を中心に、先端技術から伝統工芸まで、11社がコラボされているそうですね。 迫田:私が代表を務めるエムエス製作所は、自動車部品のサプライヤーで金型を作っています。岩田さんや石川さんのように「自社の商品」として販売できるものがありません。鉄を削るというのが、金型の要素技術で、この技術で何かを表現したいと考えた結果がゴルフクラブでした。 ただし、鉄を削る以外の技術は持っていません。デザインもパッケージもメッキもどうするか、様々な課題を抱えていました。その部分を解決するべく、この地域の方と共創。日本らしさというエッセンスも添えたいとも考えた結果、伝統工芸師の方々に声をかけて完成したのが「MUQU」です。ビジネスというよりは、それぞれの技術を最大限に表現したものを作りたかったため、コスト度外視ですべての技術を盛り込んでくださいとお願いしました。加えて、生産者の顔が見えるものづくりをしたかったので、こうして皆さんには顔を出してもらっています。 督:共創にあたっての課題は? 迫田:やはり結果を出さなければなりません。現在は愛知県内の百貨店とスポーツ用品専門店のプレステージブランドとして販売していますが、フルセットでヘッドだけで216万円という高価なものになってしまいました。 そもそも“日本一”を取りたかったので、“日本一高いもの”を作ればいいという発想から生まれた商品でしたので、高級品になることは想定していましたが、ちょっと突き抜けすぎましたね。 岩田:いや、日本のものづくりが目指す道筋の一つとして、“高付加価値化”の方向性は間違ってはいないと思いますよ。 督:石川さんの会社では、缶を軸としたアイデア商品を、自社で生み出しているというイメージがあるのですが、他社とのコラボの事例はありますか? 石川:バンダイナムコやフジテレビと一緒に、ファイナルファンタジーやアイドルマスターのオリジナル缶をイベント用に作ったことがあります。これまでは1つ100円程度の缶を作っていましたが、中身の入っていないファイナルファンタジーの缶を4500円で販売しました。この缶はイベントで即完売。「缶っていいよね」というところにリーチできるような訴え方を考えています。 督:そこに至るまでにいろいろ苦労されたんですよね。 石川:よく「アトツギは既存の事業があるからいいよね」と言われます。ベンチャーはゼロから立ち上げなくてはいけないからと。ただ当社の場合は、まったくそうではなくて。私が引き継いだ時は大赤字でした。そもそも缶は、中身のお菓子などの引き立て役で、主役ではありません。しかも鉄の値段は上がっているので、紙箱やプラスチックのパウチの方が安くていいという流れになっていました。 2000年には15億円あった売り上げも、2020年に私が承継した時は5億円まで落ちていました。そこでやはり缶自体の価値を上げなければならないと考え、缶そのものの良さを訴求する商品開発に力を入れていきました。