サムスングループがモデル。史実を交え、転生した男の復讐を描くソン・ジュンギ主演ドラマ「財閥家の末息子~Reborn Rich~」
財閥1世に光を当てて深掘り、韓国の現代史をも見せる
財閥モノのドラマは星の数ほどある。その多くに1世が登場するが、主役はあくまで御曹司・令嬢たち。1世はバイプレーヤーであることがほとんどで、その生き様を伝えるものは少ないように感じる。 最近のドラマだと「涙の女王」、少し前なら「mine」や「愛の不時着」あたりだろうか。どの創業者たちも、家庭に無責任で世間に対して傲慢という点で一致しているが、それ以外の点ではほとんど個性がない。「マイ・デーモン」のキム・ヘスク演じるチュ会長は、確かに人間味のある人物として描かれたが、彼女の半生を知り得るほど深く描写されていたとまでは言い難い。 それだけに、史実を交え、実在する財閥グループをモデルにし、日本統治時代と朝鮮戦争を経験し、軍事政権から民主化へ移行する激動の時代をかけ抜けた、酸いも甘いもかみ分けた1世に光を当てた本作の功績は大きい。彼らが韓国の現代史で果たした役割、今日まで続く影響力の大きさは計り知れず、知るべきことは多い。これまで能面のように描かれてきた1世に、本作は人格を与えた。 イ・ソンミンはヤンチョル役で23年の百想芸術大賞の男性最優秀演技賞(テレビ部門)に輝いた。当然の結果だろう。 最後に、ヤンチョルを嫌いになれないドジュンの胸の内を、多くを語らずに表現したソン・ジュンギにも大きな拍手を送りたい。 「財閥家の末息子」はU-NEXTで配信中。
毎日新聞くらし科学環境部記者 大野友嘉子