袴田ひで子さん「“被告人は無罪”が神々しく聞こえました」。袴田事件裁判で現場は“お祭り状態”に
袴田さんが“無実の人”へと変わる瞬間
午後1時14分、袴田巖さんの姉で再審請求人の袴田ひで子さん(91)と弁護団が裁判所内に入る。 午後2時、定刻通り判決言渡しが始まった。國井裁判長の開廷宣言の後、すぐに判決の結論である「主文」が言い渡した。 「主文、被告人は無罪」 この一言の瞬間、袴田さんは確定死刑囚から一転、“無実の人”へと変わった。 判決言渡しから1分も経たないうちに、日本中のメディアに「袴田事件、再審無罪判決」の文字が躍った。傍聴券に外れてしまった支援者らは、この報道で初めて判決内容を知ることとなる。支援者の一人は、無罪を知った瞬間の様子を「鳥肌が立ちました。無罪というは確信していたのですが、なぜか驚いています。外では、支援者たちで万歳三唱をしました」と振り返った。 なかでも判決で注目を浴びたのが、捜査機関による「捏造」に踏み込んだこと。支援者らにとって、判決に「捏造」という文言すら出ないかも、と言われていただけに、捜査機関の違法性を指摘した今回の判決は悲願が叶ったのだ。 午後3時59分、判決の言渡しが終わり、閉廷した。
主文が「神々しく聞こえました」
午後4時12分、裁判所前で旗出しが行われた。旗出しする弁護人の横で、ひで子さんは大きな笑顔を見せていた。 午後5時30分ころ、静岡市民文化会館3階の大会議室で記者会見が始まった。ひで子さんは非常に疲れている様子だが、記者に判決の瞬間の気持ち問われて、「裁判長さんが『主文被告人は無罪』と言うのが神々しく聞こえました」と笑顔で振り返る。 一方で、「巖の状況が安定しないので、やたらに話すわけにはいきません。少し顔色をみて、今日か明日のうちに無罪になったよと言いたいと思っています」と、少し神妙な面持ちで語る場面もあった。 弟の“真の自由”のために闘った58年。今日の「無罪判決」を、検察側が不服であると主張して控訴すれば、“真の自由”の獲得までさらに時間がかかることとなる。長い闘いに、終止符は打たれるのだろうか。 取材・文/学生傍聴人 【学生傍聴人】 2002年生まれ、都内某私立大に在籍中の現役学生。趣味は御神輿を担ぐこと。高校生の頃から裁判傍聴にハマり、傍聴歴6年、傍聴総数900件以上。有名事件から万引き事件、民事裁判など幅広く傍聴する雑食系マニア。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行っている。
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