阪神が12球団初「野球振興室」を設置 初のイベントは定員の約6・5倍超えの応募 藤川監督「野球を文化として残していかなければいけない」
プロ野球界屈指の人気を誇る阪神が、野球人口の増加へ活動を加速させている。球団はこれまで球団本部、事業本部、総務本部の3本部制だったが、来年1月1日から事業本部の中にあった「振興部」を独立させ、同格レベルの「野球振興室」を新設する。 嶌村球団本部長は「少子化が進む中、野球人口というのは少子化のペース以上に落ち込んでいる。特に中学校の部活の軟式野球がかなり減っている。タイガースとしても社内および社外にそういう姿勢を明確に示す必要性がある。全て将来への投資というか、野球界全体のことを考えていかないといけない」と12球団では前例のない組織を新設した意図を説明。藤川監督も賛同し、協力姿勢を示しているという。 「野球振興室」には事業本部の管轄だった就学前児童と小・中学生に野球を指導する「タイガースアカデミー」や、女子野球の「タイガースWomen」を移管。さらに「普及振興活動」を3本目の柱に据え、これまで以上に野球人口の拡大に注力していくシステムをつくった。 球団はこれまでも普及振興活動として、マスコットやタイガースガールズによる幼稚園訪問、小学生対象のゲストティーチャーなどを開催している。またキャンプ中には野球教室も実施。日本海リーグの石川、富山、四国ILpの徳島とコラボイベントも行っている。 今後はこれまでの活動を踏襲しつつ、来年1月1日から本格的な野球振興活動をスタートするが、嶌村球団本部長は「すでに年内からいろいろ野球振興室として動いてることもある」という。 最初の活動が、秋季キャンプを行っている高知県の安芸市営球場で、11月10日に四国開催した四国ILp・高知とのコラボイベント「未来につなぐ トライアル ベースボール」だった。 開催前から注目度は高かった。定員は小学生以下60人と保護者60人の60組120人ながら、高知県内外の人を含めて400組800人以上の応募があった。 秋季キャンプの全選手が参加したことと、阪神と四国ILp・高知との縁もイベントの盛り上がりに拍車をかけた。同球団にはかつて藤川監督や石井が所属。今秋の育成ドラフト2位で指名を受けた嶋村も参加したこともあり、当日は大盛況だった。 参加者は4グループに分かれて「ティーバッティング」、「ストライクアウト&キャッチボールクラシック」、「ハイタッチベースランニング」、「ミート&グリート」の全員が4エリアを全て体験した。 「ティーバッティング」では佐藤輝、前川が盛り上げ、「ストラックアウト」では村上、桐敷、伊藤将がサポート。「ミート&グリート」では中野選手会長が中心となった。子どもは憧れのプロ野球選手と一緒にボールに触れて野球の楽しみを覚え、保護者は子ども以上に満喫していたという。 四国ILp・高知に3年間在籍した石井は全4エリアを回り、最後にあいさつ。「僕らもすごく楽しかった。子どもたちの夢、目標にしてもらえたら」と振り返った。 藤川監督も「現役のすごい選手に野球を教えてもらえる機会が来るとは、子供たちも思っていないだろうし。すごい機会だと思いますね」と充実感を口にした。一方で野球振興活動をさらに加速させる必要性も説いた。 「やっぱり野球を大事に、文化として残していかなければいけない。(春季キャンプ地の)沖縄でもやりたいし。何とか子供たちに野球を始めるきっかけとか、続けるきっかけとか、夢を発見したり、諦めないとか。そういうのが少しでも、伝える義務がありますよね。伝えなければいけないと思います。のんびり休んでいる場合じゃないと思いますね。限られた時間ですから」と言葉に力を込めた。 今後の「野球振興室」の活動では、今季限りで引退した秋山拓巳氏が「ベースボール・アンバサダー(BA)」として、旗振り役を務める。球界屈指の人気球団による地道な活動は、野球人口増加や野球人気の維持へ大きな意味を持つはずだ。 (デイリースポーツ・西岡 誠)