『あんスタ』Special for Princess!を取り巻く“史上初” コンテンツの“枠”を超えて挑むエスプリとは?
10年もの長い歴史を紡いできた『あんスタ』の本質
だが、こういった“正体不明のアーティスト”としてのデビューや活動は、実は決して珍しいものではない。歌い手をはじめ、2.5次元アイドルや、バーチャルアーティストなど、いわば生身のアバターに重きを置かない音楽シーンにおいて、その匿名性をある意味逆手に取るような上記の潮流は、近年確実に増えつつあるケースのひとつとなる。今回のユニットデビューにおいて、既存のコンテンツ内のみならず、親和性のあるまったく別の音楽シーンからのファン獲得にも乗り出したーーそれもまた、『あんスタ』内におけるエスプリの非常に斬新な新規性とも言えるだろう。 そんなコンテンツ外の動向の産物として、今回エスプリの先行配信楽曲2曲には『あんスタ』内ユニット初となる、アニメMV&リリックビデオが実装されている。リリックビデオについては、VOCALOID・初音ミクが歌唱を担当。そのような点からも他コンテンツリスナーに向けた、正体不明のアイドル・エスプリのアプローチが垣間見えるのではないだろうか。 様々な“史上初”を経て動き出した新ユニット・Special for Princess!。だが一連のデビュー動向を経て、アイドルそのものの魅力と同様に、「『あんスタ』というコンテンツがなぜ10年もの長い歴史を紡いでこられたのか」という点でも、その本質が窺えるような気がしてならない。 より現実に即したアイドルの具現化のため、10周年を控えてもなお、今回のエスプリデビューのように斬新な発想/アイデアを大胆に取り入れる。そんな柔軟かつ能動的な姿勢こそが、大勢に真新しさを、そしてドキドキやワクワクをもたらしていることだろう。 いよいよ間近に迫る、10周年というアニバーサリーイヤー。その記念すべき瞬間はもちろんのこと、10年を越えた先に『あんスタ』が生み出す新たなアイドルたちが作り出す景色もまた、大きな楽しみのひとつとなるに違いない。
曽我美なつめ