【エヌビディア時価総額世界首位】生成AI祭りの半導体株、英アームは年初来2倍 TSMC6割高…各国は巨額補助金合戦
■ TSMCは年初来6割高、AMDやインテルも開発に注力 エヌビディアの半導体生産の委託先である台湾の半導体受託生産大手TSMC(台湾積体電路製造)の株価も年初来で6割高と右肩上がりに上昇しています。TSMCはエヌビディアや米アップルなどが主要な取引先であるほか、このほど米インテルもパソコン向けの主力CPU(中央演算処理装置)の生産をTSMCに委託することが明らかになっています。 TSMCは熊本県で24年末までに第1工場を稼働させるほか、米国やドイツでも相次ぎ工場の稼働を予定。半導体の供給を支える企業としてTSMCの存在感は世界で高まっています。 巨大ITなどが生成AIの開発を急ぐなか、重要な基盤となるAI半導体の引き合いは強くなっています。調査会社ストラトビューリサーチによるとAI半導体の世界の市場規模は28年に1277億ドルと21年の約12倍に拡大すると予測しています。 AI向けの半導体を巡っては、他の半導体大手も開発に注力しています。 米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)も6月に開かれた台湾の見本市で、従来よりも高いデータ処理能力を特徴とした新たなAI向け半導体「MI325X」を今冬にもリリースすると明らかにしました。 米インテルも6月上旬にAIデータセンター向けの新たなCPU(中央演算処理装置)を発表。インテルのパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は「ジェンスン(エヌビディアCEO)が信じさせようとしているのとは反対に、ムーアの法則は健在だ」と発言するなど、エヌビディアへの対抗姿勢を強めています。 これらは主に、データセンター向けの需要を想定していますが、AI祭りはそれ以外の半導体分野にも広がっています。
■ ASML、時価総額でLVMH超えて欧州2位に データセンター向け以外にもAI半導体の需要は広がっています。米マイクロソフトが5月に発表した新たなパソコンの生成AI機能「Copilot(コパイロット)+PC」には、米クアルコムの半導体が採用されました。 Copilotは米デルやHP、中国のレノボといった世界のパソコンメーカーが相次ぎ搭載を発表。足元のクアルコム株は昨年末比で5割超、過去1年では9割高となっています。半導体を設計した英アーム・ホールディングス株も昨年末から2倍超で上昇基調をたどっています。 パソコンなどの端末上でAIを動かす技術は「エッジAI」と言われ、対応する半導体の需要も高まっています。半導体の国際団体SEMIによると世界の半導体全体の市場は30年に1兆ドル(約160兆円)に成長すると予測。現在の2倍に市場が拡大すると見込まれています。 半導体を製造する過程で使用される半導体製造装置の評価も高まっています。 オランダの半導体製造装置大手のASMLホールディングの株価は昨年末から5割近く上昇。6月上旬には時価総額がルイ・ヴィトンの仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンを抜き、肥満症薬を手がけるデンマークのノボノルディスクに次ぐ欧州2位に躍り出ています。 ASMLは高周波の光波を利用してAI向けなど最先端の半導体製造に使用される極端紫外線(EUV)露光装置に強みを持ち、TSMCやインテルなど大手の半導体メーカーに装置を供給しています。 サムスン電子やTSMCなど主要な半導体メーカーに製造装置を販売する米国のアプライド・マテリアルズの株価も昨年末から5割上昇しています。 半導体製造装置市場では日本勢の評価も高まっています。 日本株を牽引する東京エレクトロンの株価は昨年末から4割弱、直近1年では8割近く上昇しています。生成AI向けの半導体投資を追い風に、メモリーの一種であるDRAM向けやロジック向けの装置の引き合いが高まり、25年3月期の連結純利益が4450億円と前期から22%増えると見込んでいます。 高性能な半導体の精密加工装置を販売するディスコの株価は昨年末から8割上昇しています。 半導体は社会変革のドライバーとなる生成AIの基盤として不可欠な上に、デジタル社会における安全保障上の重要性も高まっています。半導体は国の競争力を左右するため、各国は国を上げて半導体産業への支援を強めています。