APEC閣僚会議、自由貿易の推進で一致 保護主義の台頭に対抗
日本や米国、中国など21カ国・地域で作るアジア太平洋経済協力会議(APEC)の閣僚会議が14日(日本時間14、15日)、南米ペルーの首都リマで首脳会議に先立ち開催され、自由で開かれた貿易・投資を推進する方針で一致した。米大統領選ではトランプ前大統領が勝利し、保護主義的な機運が台頭するとの懸念が広がる。経済的威圧などを繰り返す中国の脅威も依然として大きく、有志国でどこまで結束を維持できるかが問われる。 ■共同声明公表持ち越しに 閣僚会議には武藤容治経済産業相らが出席した。武藤氏は閉幕後の記者会見で「ルールベースの国際経済秩序の構築の必要性を訴えた」と強調した。参加閣僚からも世界貿易機関(WTO)の強化などを通じた自由貿易の強化が必要だとの意見が相次いだという。 ただ共同声明はまとまらず、公表を15日以降に持ち越した。武藤氏は米国や中国、ロシアの存在に言及し「世界の会合で調整がつきにくいところはあるのかもしれない。その中で国際協調をどうするかがわれわれの主眼だ」と語った。 トランプ氏が米大統領選で再選し、世界では保護主義的な動きの強まりで国際貿易体制が揺らぎかねないとの懸念が強まっている。 トランプ氏は日本も含めた全ての国に対して関税を引き上げる考えを示す。相手国が報復関税に踏み切れば、国際貿易で分断の流れが加速するのは必至だ。 ■求められる日本のリード 多国間の枠組みを嫌うトランプ氏は、バイデン大統領が主導した新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を破棄する意向も示す。1期目には環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)脱退を決めた。 米国の離脱でIPEFが形骸化すれば、ルールベースの国際協調の恩恵に期待する日本には打撃だ。日本政府関係者は「TPPは関税引き下げを伴うが、IPEFはあくまで供給網などの協力の枠組み」とトランプ氏の翻意に期待するが、胸中を測りかねている。 もっとも日本は米国離脱後のTPPを牽引し、12月中旬には英国が新たに加盟する議定書が発効する。加盟国が欧州にも広がり、自由貿易を基盤とする経済圏は新局面に入った格好だ。
重要物資の輸出制限による経済的威圧や、電気自動車(EV)などの過剰生産を繰り返す中国はなお脅威だ。日本はトランプ氏との取引に対応しつつ、同時に自由貿易の旗振り役として多国間の枠組みをリードする役回りが求められる。(中村智隆)