ある裁判官のゲスすぎる提案に絶句「週刊誌にリークすればいい」…日本の裁判所で日夜行われる仁義なき「出世のための戦い」を大暴露
仁義なき「出世のための戦い」
もうひとつは、極秘裏に行われたある調査のことである。 内容は簡単なものであり、特定の期間に全国の裁判所で判決が下された国家賠償請求事件について、関与した裁判官の氏名と、判決主文の内容とを一覧表にしたものであった。前記のとおり司法行政を通じて裁判官支配、統制を徹底した矢口長官体制下の出来事であったことを考えると、その資料が何らかの形で人事の参考に供された可能性は否定できないと思う。 ともかく、いやなことが多い2年間だった。私の場合、この時に感じた事務総局の官僚組織と司法官僚に対する違和感は、その後も、消え去ることなく残った。 その局付生活の救いとなっていたのは、民事保全法という民事訴訟法領域の基本法の立法準備作業の経験だった。法務省の山崎潮参事官とのコラボレーションは、彼がただの法務官僚ではなくクリエイター的な資質をもった人物であったことから、私にとって学ぶところの大きなものだった。法制審議会で聴くことのできた当時の学界の重鎮三ケ月章教授を始めとする学者たちの議論、意見からも、やはり多くを学んだ。前記のとおり、私の本来の資質は、社会・人文科学研究者のそれであったと思うが、それが明確に形を成したのは、この2年間であったと思う。 『裁判官の衝撃告白「国が《法の抜け穴》を悪用して」…横行する「談合」「事前リーク」「出来レース」はもはや「裁判の自殺」』へ続く 日本を震撼させた衝撃の名著『絶望の裁判所』から10年。元エリート判事にして法学の権威として知られる瀬木比呂志氏の新作、『現代日本人の法意識』が刊行されます。 「同性婚は認められるべきか?」「共同親権は適切か?」「冤罪を生み続ける『人質司法』はこのままでよいのか?」「死刑制度は許されるのか?」 これら難問を解き明かす共通の「鍵」は、日本人が意識していない自らの「法意識」にあります。法と社会、理論と実務を知り尽くした瀬木氏が日本人の深層心理に迫ります。
瀬木 比呂志(明治大学教授・元裁判官)