1970年のお祭り広場に現出した「調和」 混沌の現代、大阪から「文化の集積地」再び 万博未来考 第4部(3)
■「大阪だからこそ、できることを」
上振れを続ける経費などを巡って、2025年大阪・関西万博の開催意義に懐疑的な声はある。しかし、世界に目を向ければ社会の分断は深まり、ウクライナや中東など、各地で戦火は消えない。混沌(こんとん)に満ちた世界の中で、半世紀前に万博で「人類の進歩と調和」を発した大阪から、再び世界に「調和」を訴える好機でもある。
上田さんによると、1970年万博で「お祭り」を行うことに、国側は難色を示した。国側は産業技術を披露する場と捉えていたのだ。しかし、現場は「文化の集積地」という理念を押し通した。「当時、大阪はちゃらんぽらんだったから」。上田さんはそう振り返り笑みを浮かべた。
世界をつなげる。そんな理念を託された1周約2キロ、幅30メートルの巨大な大屋根(リング)が囲う2025年万博の会場では、会期中は毎夜、音響や照明、プロジェクションマッピングが連動するショーが展開される。ショーのタイトルは「One World, One Planet. ―世界中の願いをつないで、ひとつに。―」。上田さんは「大阪だからこそ、できることをやってほしい」と願う。(藤井沙織)