給食で娘失った母「ミス起きる前提で備えを」 アレルギー指導士らに
アレルギー疾患療養指導士(CAI)の初の全国大会が9日、東京都港区の東京慈恵会医科大学西新橋キャンパスで開かれた。約12年前、調布市立小学校で、5年生だった娘(当時11)を給食による食物アレルギーで亡くした母親(62)が講演し、「人為的事故を100%防ぐことはできない。ミスは起きるという前提で備えをしてほしい」と話した。 【イラスト】おかわりした給食のチヂミでアレルギー 親友の生死を分けた14分 母親は事故の風化を防ぐため、講演を引き受けたという。娘の幼いころからの写真をスライドで紹介しながら、事故当日の状況も説明した。 学校側には、事前に乳製品などにアレルギーがあると説明し、対応についても話していたという。だが、給食でおかわりしたチヂミにチーズが入っていた。 具合が悪くなった後、アナフィラキシーショックに有効な自己注射薬「エピペン」を校長が打つまでに時間がかかり、救命は間に合わなかった。 母親は「食べるのが大好きな子でした。きっと(娘も)アレルギーのお子さんの力になりたいと思っていると思う。みなさんにもご尽力いただければと思います」と締めくくった。 この日は、アレルギー疾患療養指導士の資格を持つ看護師や薬剤師、管理栄養士ら約150人が集まり、オンラインでは250人以上が耳を傾けた。 大会長で日本アレルギー疾患療養指導士認定機構理事長の勝沼俊雄・東京慈恵会医科大教授(65)は「彼女の命を無駄にしてはならない」と、現場の教職員らと医師をつなぐ「アレルギー対応ホットライン」を事故の後につくり、相談を受け続けている。 勝沼教授は大会で「各地で日々頑張っているみなさんに、ぜひ全国に仲間をつくってもらい、患者や家族に寄り添う力にしてほしい」と呼びかけた。 アレルギー疾患療養指導士の認定制度は、誰でもどこでも良質なアレルギー医療を受けることのできる仕組みを作るために2021年度から始まった。食物アレルギーやぜんそく、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患について専門知識を持ち、患者や家族に助言や指導をする。現在、指導士は1千人を超える。 アレルギー疾患は、薬の処方だけではなかなか良くならず、正しい服薬方法や知識が必要となる。また、正しい対処法を知らないと、アナフィラキシーの危険にさらされる恐れもある。(貞国聖子)
朝日新聞社