松田馨「軽い気持ちででもいいので、投票へ行ってほしい」選挙プランナーが語る“1票の重さ”
2006年に選挙コンサルティング会社「ダイアログ」を創業。選挙プランナーとして、地方選挙から国政選挙まで300を超える選挙に携わる松田馨さん。勝率7割超を叩き出す彼のTHE CHANGEとは。【第2回/全2回】 ■【画像】「軽い気持ちででもいいので、投票へ行ってほしい」熱く選挙を語る選挙プランナー松田馨氏 当初、“勝てない”と思っていたのに、勝ってしまった例の一つが、23年の兵庫県芦屋市長選で当選した高島崚輔市長。史上最年少となる26歳で市長になったということで、全国ニュースにも取り上げられ、話題になりました。 高島市長が初めて私の事務所に来たのは、前年の9月。白いポロシャツ姿の彼は、政治家とはほど遠いイメージでした。芦屋市長選の他の候補者を調べてみると、2期目を目指す現職女性市長、元タカラジェンヌ、元民放アナウンサー……。当時の史上最年少だった大阪府四条畷市の東修平市長からの紹介だったのですが、難しい案件を持ってきたなというのが正直な感想でしたね。 でも、その日に早速、3時間ほど打ち合わせをすると、彼の優秀さと人の良さがものすごく伝わってきたんです。応援したい! と思わせる魅力がありました。若さ×好学歴というのは、鼻についてマイナスに作用することが多いので、そこは一番気を付けようと思いましたね。 選挙戦が始まると、加速度的に人気が上がっていきました。印象的だったのが、開票日に地元紙の記者から「社運を賭けて出口調査をしたので間違いないです。8時にバンザイしてください」と言われたこと。普通はNHKの当確を待つんですが、8時にバンザイしました。結果は圧勝でしたから、驚きましたね。
立候補している人だけが感じる“1票の重さ”というのがある
選挙ウォッチャーで芸人の山本期日前さんが「“芦屋はこのままでは普通の街になってしまう”という演説がウケているのが信じられない」と言っていましたが、その言葉に共感する土地柄と彼の個性がマッチして、大きなムーブメントを起こしたんだと思います。勝てても接戦だという私の予想は外れ、不明を恥じるばかりです(笑)。 弊社は零細企業なので、依頼がたくさん来ても、すべてを引き受けることはできません。候補者の方との相性も含めて依頼を受けるかは決めています。惚れ込んで引き受ける仕事なので、負けたときは本当に悔しいです。ここでは書けないことを、有権者に対して思うこともありましたしね。過去形にしておいてください(笑)。 でも、長くやっていて良かったなと思うのは、負けた人がそこで終わらず、4年後に出馬して当選する瞬間に立ち会ったとき。選挙は本人だけじゃなく、ご家族にも負担がかかってしまうものです。選挙は勝ち負けがすべてだと思われることが多いですが、勝ち方、負け方というのも、その後に大きく影響する。仮に勝ったとしても、僅差の勝利だと、その後の政治活動にも影響が出て、実行できることに限りが生まれてしまいます。逆に、これだけ多くの人が支持してくれたのだから、次こそ頑張ろうと燃える根拠になる敗戦もあります。 月並みな言葉ですが、立候補している人だけが感じる“1票の重さ”というのがあるんです。有権者は重く考えなくていいですが、選挙権は義務ではなく、国民に与えられた権利です。どうせなら、行使をしたほうがいいのではないでしょうか。