センバツ2024 府勢の戦い、振り返る 悔しさ抱き、成長の夏へ /京都
健大高崎(群馬)の優勝で幕を閉じた第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)。府勢の京都外大西(18年ぶり7回目出場)と京都国際(3年ぶり2回目出場)はともに1回戦で敗れたが、甲子園で躍動するチームの姿は観衆の記憶に刻まれ、選手にとってはこの経験が貴重な財産になるだろう。短くも濃密だった春の戦いを振り返る。【矢倉健次】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち ◆山梨学院7―1京都外大西(20日・大会第3日) ◇最後まで食らいついた スコアを見れば大差だが、練度の高い昨春覇者に対峙(たいじ)して最後まで緊張感が保たれていた。 大黒柱の左腕エース・田中遥音(3年)は序盤から相手打線にうまくタイミングを合わせられ、四回以降は毎回先頭打者を塁に出す苦心の投球。それでも勝負どころでは、生命線の外角低めに制球された速球を投げ込む。四回にスクイズ(記録は犠打野選)で同点とされ、なおも1死二、三塁のピンチが続いたが、野手の機転もあってスクイズを外した。チーム一体の好守だった。六回に勝ち越され、流れが相手に傾いたが最後までマウンドに立ち、137球を投げ通した。 二回表の先制劇は見せた。4番・相馬悠人(3年)が無死からチーム初安打で出塁。松岡耀(3年)がカウント0―2と追い込まれながら左越え二塁打を放って二、三塁の好機を作り、内野ゴロでしぶとく得点を奪った。だが、打線は先発の相手左腕にコーナーを攻められて苦しんだ。強振して凡打を重ね、糸口がつかめない。七回からエース右腕につながれ、かわされた。ともに2年で1、2番の杉浦智陽、谷春毅が一度も出塁できず、乾光葵主将(3年)は「2人に重圧を背負わせすぎた。僕ら上級生の責任」と唇をかんだ。 試合中に風雨が強まり、プレーが乱れたのは悔やまれた。ただ、上羽功晃監督の試合後の表情は穏やかだった。「ワンバウンドの投球を全部止めた2年生捕手の下曽山仁。スクイズを見破って『外せ』と一塁から叫んだ相馬。選手たちの成長を感じた」 ◆青森山田4―3京都国際(21日・大会第4日) ◇鉄壁の守り、チーム一丸 京都国際のエース左腕で主将の中崎琉生(3年)は、昨秋の公式戦で防御率がわずか0・73。その原動力は1試合平均与四死球1・16の制球力だ。 しかし一回表の攻撃が3者凡退に終わり「自分が抑えなければ」と意識し過ぎた。先頭打者に四球を与え、きっちり犠打で送られる。2死後、勝負を焦ったか球が単調になり3連打で2点を先制された。五回の失点も先頭打者への与四球から追加点を奪われた。 次第に落ち着きを取り戻し、試合を作ったのはさすがだ。捕手の奥井颯大(3年)も軽快に盗塁を阻止して支えた。七回1死三塁のピンチにバッテリー、内野の連係でスクイズを外し、失点を防ぐなど無失策の守りは本領発揮だった。 最後は雨もあって中崎は制球力が落ち、連続長短打でサヨナラ負けを喫した。マウンドで細心の注意を払い続ける集中力。その大切さを実感したことは夏への糧だろう。 打線では、昨秋途中から急病でチームを離れた藤本陽毅(3年)が3長短打と躍動。八回は二塁打を放ち、機転の利いた重盗を決めて一時同点とするホームを踏んだ。22年夏の甲子園を唯一経験した存在感を示した。4番・高岸栄太郎(3年)も2安打と気を吐いた。一方、3得点のうち適時打は内野安打1本。どんな形でも点を取るしぶとさと共に、全国で勝ち進むには力強さが必須だ。 小牧憲継監督は「勝たせられなかったのは、自分の力不足。一回の失点が勝負を分けた」と振り返った。守備重視のメンバーをそろえたが、外野の頭を越す長打力をまだ育てられていないという思い、経験の少ない追い掛ける展開でよく追いついたという思いが交錯していた。逆に見れば、好守とも伸びしろは十分ということだろう。