「風を味方につけた」エンド選択…伝統校・富山東、終盤セットプレー弾で47年ぶり全国に王手!
[11.4 選手権富山県予選準決勝 富山東高 1-0 富山北部高 高岡スポーツコアサッカー・ラグビー場] 【写真】ジダンとフィーゴに“削られる”日本人に再脚光「すげえ構図」「2人がかりで止めようとしてる」 第103回全国高校サッカー選手権富山県予選は4日、高岡市の高岡スポーツコアサッカー・ラグビー場で準決勝を行い、富山東高が1977年度以来47年ぶりの全国出場に王手をかけた。今季の富山県1部リーグを制した富山北部高に対し、あえて前半に風下のエンドを選ぶと、狙いどおりに0-0でハーフタイムへ。最後は後半34分にセットプレーから奪った決勝点を守り切り、したたかな内容で決勝進出を決めた。 ピッチを縦断するように強風が吹いていた富山県準決勝第2試合。富山東はキックオフ前のコイントスに勝利すると、あえてベンチサイドとは反対の風下エンドを選択し、県1部リーグの対戦で2戦2敗に終わっていた富山北部とのビッグマッチに挑んだ。 対戦相手の富山北部は県1部リーグ14試合で失点わずか「6」という堅守が武器。そんな相手に対しては「自分たちがいかにゴールを目指す形を見出せるか、そして相手の猛攻をいかにゴールから遠ざけるかというゴールを意識したトレーニングをしてきた」(上田裕次監督)と勝負際にこだわり、選手たちは後半勝負のゲームプランを採用した。 とはいえ40分間ハーフで延長戦のないトーナメントとあり、先制点の行方がとても大事だとされる高校選手権。先に点を取られると苦しくなるため、実は主将のMF松本翼(3年=芳野中)は風下のエンド選択について「自分はちょっと嫌だった」と明かす。 それでも松本は最終ラインのDF川副湧誠(3年=富山新庄U-15)、DF福澤樹(2年=奥田中)ら先発メンバーと話し、風の影響を受けやすい選手たちの意見を尊重。「わざと風下にエンドを取って前半は耐え忍ぶ」というプランに舵を切り、目論見どおり拮抗した展開に持ち込むことに成功した。 そんな富山東は攻撃でもFW遠藤優太(2年=富山U-15)にボールを集めつつ、地上戦で攻め込むシーンを数多く作ると、前半6分にビッグチャンス。遠藤のクロスに飛び込む松本のシュートはわずかに外れたが、最初の決定機を生んだ。また守備では相手のロングフィードが風に乗って大きく流れる形が続いたことにも助けられ、互いに決定機の少ないまま0-0でハーフタイムを迎えた。 そして後半29分、富山東がデザインされたセットプレーで試合を動かした。敵陣右サイドでFKを獲得し、松本がクイック気味のリスタートでパスを右サイドに送ると、サインプレーで感じていたMF今井悠太(3年=スクエア富山)が右サイドを突破。鋭いクロスにDF中田航平(2年=水橋FC)がファーサイドから飛び込み、最後は身体ごと押すかのように強引にシュートを沈めた。 富山東の右サイドバックを担う186cmの長身DF中田はこの日、守備でも富山北部エースのFW中島澄也(3年=富山U-15)をうまく抑え込んでいたが、その上にゴールまで記録。指揮官も「変にプレッシャーを感じたりしすぎず、楽しんでいろんな状況をクリアしてくれていて、見ていて思わず笑みが出てしまうというか、周りに力を与える選手」と期待を寄せる2年生が結果を出した。 そのまま試合はタイムアップを迎え、富山東は2015年度以来9年ぶりの決勝進出が決定。果敢なエンド選択について「0-0のスコアで行けたのは狙い通りで、風を味方につけられたゲームだった」と前向きに振り返った松本は「最後はなかなか足が止まったけど、自分たちで考えながら後半に風上を取って有利に進められたのが大きかった」と勝因を口にした。 決勝の相手は前回大会まで9連覇中の絶対王者・富山一高を4-1の大差で破った龍谷富山高。「リーグ戦でも1勝1敗でやっているので勝負だなと」。人生初出場がかかる相手との最終決戦に向け、そう意気込んだ上田監督は「しっかりコンディションを整えて、自分たちが持てる力を発揮できる準備をしたい。チームワークがいいので、このチームでもっとやれるようにというのを実現してもらえれば」と力を込めた。