北海道の端っこに移住した作者が考える、地方移住に向いている人、いない人の違いは?【漫画の作者に聞く】
最北端の地、北海道・稚内へ、川崎生まれ横浜育ちの都会っ子学生が就職を機に移住! 電子書籍として発売中の「しろまる最北日記 横浜から稚内へ就職したとある会社員の、愛すべき最果て移住生活」は、作者が実体験を元にした“北海道あるある”をお届けする漫画。WEBニュースサイト・ウォーカープラスで連載され反響を呼んだ“移住体験コミック”だ。 【漫画の本編を読む】地方移住のリアル 本記事では、同書籍から一部抜粋したエピソード「最北端(わっかない)で暮らすとは」について、漫画に込めた思いなどを聞いてみた。 ■最北端(わっかない)で暮らすとは 地方移住の最大のメリットは、職住近接。作者の場合は、自宅から職場まで往復15分。東京都心勤めなら往復2時間は珍しくない。空いた時間は自分の好きなことに有効活用!自分の時間をたくさん手に入れることができる。 地方はとにかく家賃が安い。さらに浪費を促すような娯楽がないから出費も少ない。その代わりマイカーや暖房費にお金がかかり、家賃や生活費のアドバンテージは帳消しに。マイカーを持ちたいけど都会で維持は大変…という人にはおすすめ。同じお金がかかるなら、渋滞知らずの北海道はドライブも快適。 地方移住に向いている人ってどんな人?作者は「都会は消費、地方は生産」と考える。ひたすら刺激を得て大量の情報を消費する人には、地方は退屈かもしれない。しかし与えられた環境の中から自分で楽しみを見つけられるタイプの人は、地方暮らしに向いているのではないだろうか。 「稚内に住んで一番よかったことは?」。その答えは「この漫画」だ。地方移住によって得られた時間的余裕から漫画を製作・発信し、多くの人に楽しんでもらえたことは、都会暮らしではなかなか難しかっただろうと作者は考える。 旅行で数日滞在するのと、実際に暮らすのではわけが違う。いきなり地方移住するのではなく、まずは候補地で長期バイトなどのお試し滞在するのがベスト。地域と向き合い、「ここで暮らしていける!」と判断してから移住することをおすすめする。 ■移住者同士で情報交換 「なんで稚内に?」と聞くのはお約束 地方移住者同士で知り合って、会話や情報交換をすることも。「稚内は観光業が盛んなほか、道北の中心都市ということで各企業の最北店舗・支所がたくさんあり、全国各地から人が集まっています。〝地方あるある〟の1つかもしれませんが、初対面の会話のかなり序盤で出身地の話が出て 『なんで稚内に?』というお決まりの流れになりがちです」 地方移住系のアカウントの人から、「移住の参考になった」「作品を見て北海道生活が楽しくなった」などの言葉をもらうと、とてもうれしかったそう。「稚内への移住に際して困っているという方から直接メールをいただき、可能な範囲でアドバイスをさせていただいた事例もあります」 ■北海道への移住に向いている人は 特に「北海道への移住」に向いているのは、どんな人なのか。「主観になりますが、作中の私のように、『マイカーを日常生活に取り入れたい人』にはおすすめです。車通勤ができれば満員電車とおさらばできますし、駐車場にも困りません。そして何より北海道は絶好のドライブコースの宝庫です。しかし、広い北海道では年間の走行距離が長くなります。加えて冬場の凍結防止剤(塩カル)が足回りを腐食させるので、車への負担が大きいです。愛車を大切にしたい人は、普段使い用でセカンドカーの購入がおすすめです。また、マイカーから派生して趣味関連になりますが、『アウトドア好きな人』も自然豊かな北海道はきっと気に入ると思います」 別の角度から北海道に向いているかどうか調べる方法としては、「北海道は海に囲まれている独立した都道府県で、都市の構造や雰囲気がちょっと独特です。北海道との相性を探るために、圧倒的な中心都市である『札幌を好きになれるかどうか』。これはけっこう重要だと思います。気に入ったなら、きっと北海道を好きになれるはずです」 さらに細かいところでは、「セイコーマートにいつでも行ける」「飲みたいときにサッポロクラシックが買える」「水曜どうでしょうの新作が最速で地上波で見られる」などは、知人からうらやましがられるとか。「これに共感できる人は北海道に住んでみてはいかがでしょうか(笑)」 ■逆に、北海道への移住に向いていない人は 向いていない人は?「第一に『寒いところが苦手な人』は無理です。雪国の建物は暖かいですが、それでも外出時や雪かきの際は極寒の環境下に身を置かなくてはならないので、寒さに対する覚悟は道民になるための必須条件です」 また、向いている人とは正反対に「車を持つ気がない人」も厳しいという。「札幌や人口が10万を超えるある程度の都市であれば、車がなくても問題ないかもしれませんが、3万人規模の稚内では自家用車があったほうが生活が圧倒的に豊かになります。車を持たずとも生活はできますが、結果として地方移住をやめてしまう理由になりかねません」 ほかにも、「ライブやスポーツ観戦など、『イベントへの参加が趣味の人』にも北海道は酷です。三大都市圏に遠征をする際は必ず海を渡る必要があり、遠征費用が莫大なものになります」 最後にだいぶ偏見が混じりますがと前置きした上で、「『きれい好きな人』も地方暮らしに向いていません。賃貸は築年数がだいぶ経った物件が多く、公共施設、飲食店、交通機関、田舎にあるものは総じて年季が入っています。『古汚い』と感じる人は一定数いるでしょう。動物(虫)の多さも気にする人は気にしそうです」