罪を犯した人の立ち直りを考える、元ボクサー山中慎介さんも講演 殺害された保護司の思い継ぐ
罪を犯した人の立ち直りを支援する更生保護の活動について考えるフォーラムが23日、栗東市綣2丁目の栗東芸術文化会館さきらで開かれた。今年5月に自宅で殺害された大津市の保護司新庄博志さんが立ち上げたプロジェクトの一環で、湖南市出身の元プロボクサー山中慎介さん(42)の講演や、社会福祉を学ぶ大学生らを交えたパネル討論を通して、人のつながりの大切さや孤立する人を生まない仕組みの必要性について語り合った。 新庄さんは、「滋賀KANAMEプロジェクト」と名付け、罪を償った後の人を地域全体で支える仕組み作りを進めていた。今回のフォーラムは草津・栗東両市の保護司らが、両市での同プロジェクト第1弾として開催。市民ら約300人が耳を傾けた。 山中さんは、自身の後援会長が草津市の保護司と知り合いだった縁で、少年院を出た若者を東京に招いて一緒に練習していたこともあるという。講演では「当初は自分が強くなることだけが夢だったが、王座を12度防衛できたのは後援会の方やファンを喜ばせようという気持ちになれたことが大きい」と振り返り、他者との関係を大事にすることが人としての成長につながると力を込めた。 その後の討議には、山中さんのほか、橋川渉・草津市長、竹村健・栗東市長、龍谷大社会学部現代福祉学科の学生2人らが登壇。竹村市長は「行政が直接、罪を犯して出所した人を支援するには目が届きづらい面がある。保護司らが活用しやすい環境整備に特に力を入れたい」と述べた。学生からは「立ち直りに必要なのはコミュニケーションが取れる居場所があることや、自分が誰かにとって必要な存在だと感じられることではないか」などの意見が出た。 フォーラムを聞いた上西力三さん(68)=湖南市=は「たとえ罪を犯しても本人が立ち直ろうと努力しているなら、周囲も懸命に支えなければならないと改めて感じた」と話した。