「南米王者のパラグアイが弱かったわけではない」城彰二氏が語るパリ五輪開幕戦で日本が5-0圧勝できた理由とは?
後半18分。斉藤がペナルティエリア内をドリブルで切り裂き、絶妙のクロスを上げて、そこに三戸がヘッドをドンピシャのタイミングで合わせた。この2点目はパラグアイの戦意を喪失させた。悪い流れの中でも得点できるのが、日本の五輪代表の強さの証かもしれない。結果的に、ここからゴールを量産することになるが、日本が誇る“個の力”と組織がパーフェクトにバランスよく機能した試合だったと思う。 “個の力”の部分では斉藤と三戸の2人が光った。 三戸にはボールが集まった。常に動いて「ここに来るだろう」の予測のもと相手ディフェンスの間でボールを受け続けた。上背はないが、ポジショニングがうまく抜群の決定力を持つ。三戸にボールが集まったもう一つの理由として細谷の存在がある。 細谷はかなり高い位置をキープ。体を張ってボールを保持して三戸とのスペースを共有した影響も大きかった。ゴールはなかったが、この試合における細谷の貢献度は高い。 また攻撃面ではワイドに横幅を使って展開したことが効果的だった。これによって中にクサビが入るようになった。視野の広い藤田が、全体の流れや時間帯をうまくマネジメントした。攻撃にいくところと、抑えるところを的確に判断しコントロールした。そこに山本も絡んでアクセントをつけた。ディフェンス面では、高井に象徴されるように、ほぼどの局面でも1対1で負けず流動的なカバーリングも素晴らしかった。 そして特筆すべきはセカンドボールの攻防で完勝したことだろう。 パラグアイは、パワーのあるチームで、ボールをつなぐのは簡単ではない。だが、中盤の選手が狙いどころをしっかりと絞ってセカンドボールを俊敏に奪い続けた。一歩、二歩の出だしがパラグアイの選手より確実に速かった。セカンドボールを回収して、トランジションし、しかもミスが少ない。ここが五輪チームの強さの秘密なのかもしれない。 五輪の戦いにおいて最も重要な初戦に勝ち、しかも得失点差で優位となる5-0の大差をつけた。このスコアは、マリ、イスラエルの2チームに間違いなくプレッシャーをかけた。決勝トーナメント進出の可能性が高くなったと見ていいだろう。