「レイザーラモンHG」ハードゲイキャラを作り上げて20年 多様性の時代で直面した「挫折」と「葛藤」
2005年に「フォー!」というフレーズが新語・流行語大賞でトップテンに入り、一気に時代の寵児となったお笑いコンビ「レイザーラモン」のHGさん(48)。さまざまな性自認への理解が進んできた時代の中で、最初は「ハードゲイ(HG)」という意味からスタートした芸名を取り巻く空気も変わってきました。環境が変化していく中での葛藤。そして「膝から崩れ落ちる喪失感」から引き揚げてくれた先輩の言葉とは。 【写真】表情が丸くなった?「レイザーラモンHG」の最新ショットはこちら * * * 今から20年ほど前“ハードゲイ”というコンセプトで“HG”を名乗りました。 実際にはハードゲイではないんですけど、キャラクターとしてHGをやる。その中で失礼のないように。そして、自分がしっかりと理解したうえで取り組みたい。そんな思いから当時、大阪でゲイの方々が集う地域があって、そこに通って、勉強をさせていただくところからスタートしました。 あと、お仕事で「おすぎとピーコ」さんやピーターさん、マツコ・デラックスさんといった方々にお会いするたびにごあいさつをして、決まった規則があるものではないんですけど、自分なりに筋を通すというか、しっかりと思いを伝える。そんなことも並行して続けてきました。 そんな状況でHGというキャラクターをやらせてもらってきたんですけど、今から5年ほど前ですかね。膝から崩れ落ちるような思いをしたんです。 いわゆる一発屋芸人ばかり30人くらいが集まっての番組ロケがあったんです。真ん中にやぐらを組んで、盆踊りみたいにみんなが輪になって踊って、順番に往年のギャグを披露していく。実に楽しく、盛り上がる企画で、僕の順番がまわってきました。
■「ハードゲイ」という言葉はナシで… HGの衣装で「どーもー!ハードゲイです!」と言って腰を振り「フォー!」と叫ぶ。いつも通りの一連のムーブをしました。そこでディレクターさんが駆け込んできて「…すみません、ハードゲイという言葉はナシでお願いできますか」と言われました。 少しずつ時代の変化は感じてました。ただ、もちろんのこと、自分の中でバカにするような思いなんてみじんもないし、敬意を払って、通せるところは筋も通してやってきた。そんな感覚だった中、もうこれはダメなんだと……。 その番組が号砲になったように、そのあたりから他の現場でも、バタバタと「ハードゲイというワードはすみません……」となっていきました。キャラクターは自分が生み出したものだし、いわば子どもみたいなものです。もちろん「はやり廃り」はあるけれど、こういう形でいきなりナシになってしまうのか。正直、すごくショックでした。 事実として世の中にはいろいろな方がいらっしゃる。僕が筋を通したつもりになっているだけで、それはごく一部の方に勝手におうかがいを立てていただけのこと。どこまでも独善的なことですし、不快に思われる方がいらっしゃるかもしれない。それは全くもって否定できないことです。 いくら子どものような存在とはいえ、これはもう完全に辞めたほうがいいのか。でも、細かく言葉にするのは難しいけど、それが正解とは思えない自分もいる。 その思いの中で考えたのが、幼稚な考えかもしれませんけど、HGの意味を変えるということだったんです。 ハードゲイではなく“ホットガイ”にしよう。ま、そうなると「そもそも、ホットガイってなんやねん!」という話にもなるんですけど、とにかく熱い男だと。さらに、それを踏まえると相方のRGは何の略やねん?リアルガイ?ただの男やないか!みたいなことにもなるんですけど、このキャラクターを続けるためにその変更をしました。