宙に浮いた供託金100億円、高額献金対策の新法は「何の影響もない」 旧統一教会会長、退任時期は明言せず【単独インタビュー後編】
安倍晋三元首相銃撃事件の発生から2年に合わせた、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長の単独インタビュー。後半では、国側の施策への対応、自身の進退などについて聞いた。(共同通信=深江友樹) 【写真】宗教2世たちからの手紙、読んだ山上被告は… 父の不倫をきっかけに、母が入信。「むち打ち」が習慣化 社会はどれだけ変わったか
―安倍元首相銃撃事件で逮捕、起訴された山上徹也被告について、教団として新たに把握したことはあるか。 特に聞いていません。公判が開かれ、人物像が分かるまでは論評は控えた方が良いと思っている。 ―教団改革の状況や課題は。 コンプライアンス宣言以降の取り組みは確実に進めている。かつて裁判になったような案件は出てこないと感じる。 ◇事件後、教団の高額献金問題が改めて明らかになったことを受けて、昨年には不当寄付勧誘防止法が施行された。消費者庁は、同法に基づく昨年度の調査対象は97件だったと発表。勧告や命令には至っておらず、個別の団体名も公表していない。 ―不当寄付勧誘防止法の影響はあるか。 消費者庁からアプローチはない。引っかかるような案件もない。特に何の影響もない。10万円以上の献金には、借金していないかなどを確認する書面を作成している。本人が拒否するケースなどを除き、9割以上で作成している。 ◇教団を巡っては、解散命令が出るまでに財産を国内外に散逸させるのではとの指摘が相次ぐ。財産監視強化のため、文部科学省は3月、特例法に基づき教団を「指定宗教法人」に指定したと公示した。
―指定宗教法人に指定された影響はあるか。 3カ月に1度、財務書類を文科省に提出することになった。すごい作業で、経理は大変。財務書類は定められた通り今後も提出する。「特別指定宗教法人」にならなかったことは安心している。特別指定となると、被害者と言われる方が財務書類を閲覧可能になる。これは本当にあっちゃいけない。 ◇教団は昨年、被害者への補償の原資として、国側に最大100億円を供託する案を表明した。教団の財産が海外などに流出することが懸念され、規制法が必要との声も上がっていた。こうした懸念に対応する形で表明したとみられている。 ―最大100億円の供託案はどうなったのか。 国からのアクセスは何もない。供託金は宙に浮いている。財産を隠す意図はなかったので、その意図を表明するために供託案を提示した。被害者がもしいれば、しっかり対応する。 ―財産の海外移転はないのか 海外送金はストップしている。海外の研修参加時に現金を持参する場合は、日本での申込時に確認するシステムを稼働させた。