乳がん手術後の乳房再建、徳島県内わずか4% 喪失感など軽減も、保険適用知らず?
乳がんの手術で摘出した乳房を再建する人の割合が日本は十数%と諸外国に比べて低く、徳島県内では4%にとどまっている。乳房再建術が保険適用されることなどが知られていないのが原因とみられる。10月は乳がんの早期発見・治療を啓発する「ピンクリボン月間」だった。女性の9人に1人が罹患(りかん)すると言われる乳がんの術後の生活の質(QOL)の向上について取材した。 徳島の41歳「戦業」主婦、乳がんと闘いながらつかんだ柔術世界女王 乳がんは早期の発見と治療により10年後の生存率が他のがんと比べて高く、術後のQOL向上が課題となっている。手術で乳房を全摘出または一部摘出した場合は、胸の形が術前から大きく変わってしまう可能性があり、それが患者の精神的負担になっているケースも少なくない。そうした身体的変化への対応として乳房再建術がある。 再建術には患者のお腹や背中の組織を使う方法と、シリコン製の人工乳房を使う方法がある。いずれも保険が適用され、高額療養費制度を利用すると10万円前後でできるが、あまり知られていない可能性がある。また、シリコン製人工乳房については「がんの再発を発見しにくくなる」という誤った情報を信じる人も少なくなく、理解が広がっているとは言い難い。 乳房切除後、時間が経過してから再建することもできるが、放射線治療で皮膚が硬くなって手術までに時間を要したり、手術の難易度が上がる場合がある。 厚生労働省の2022年度のデータによると、県内の乳がんによる乳房全摘出件数は252件。再建術を受けたのは10件のみだった。 38歳の時に片方の乳房を全摘出した阿南市の女性(47)は「切除する時は再建しなくても平気だと思った」と当時を振り返る。しかし、術後、入浴や着替えのたびに大きな喪失感を感じるようになり、精神的に不安定になって涙もろくなったという。 再建を希望したものの、放射線治療の影響で再建術を受けるまでに2年を要した。再建後は「元通りではないけれど、胸があることがすごくうれしい。背筋が伸びるような気持ちになれた」と喜ぶ。 再建については、リスクやメリットを正しく理解することが大切だ。日本形成外科学会は7月、「患者さんと家族のための乳房再建ガイドブック」を発刊し、周知に努めている。徳島大学病院形成外科・美容外科の橋本一郎教授(形成外科学)は「再建に関心がある場合は主治医に説明を求め、再建が可能かどうか、どういう方法があるのかを尋ねてほしい」と呼びかけている。