JBLの最新TWS『TOUR PRO 3』はファン待望のLDACについに対応! 大型画面でのタッチ操作や気になる音質まで徹底レビュー
先日開催された、ハーマンインターナショナル「HARMAN ExPLORE TOKYO2024 秋季新製品内覧会」で参考出品されていた、JBLの完全ワイヤレスイヤホン『TOUR PRO 3』が正式に発表された。オープン価格で10月3日に発売予定だ。 【写真】イヤホンケース前面にあるタッチパネルで操作できるのが便利 JBLといえば、高級スピーカーブランドとして、日本のオーディオファンに絶大な人気を誇ってきた。ブルーのフロントバッフル&オレンジのロゴに憧れ、いつかはJBLのモニタースピーカーを手に入れたいと思っていた人も多いだろう。 そんなJBLも最近は様々なポータブル機器を発売し、完全ワイヤレスイヤホンではエントリーモデルやゲーミング用、ハイレゾ対応ノイズキャンセリングモデルなどをラインナップしている。 ■デュアルドライバー搭載&LDAC対応に進化 新製品の『TOUR PRO 3』は、そんな完全ワイヤレスイヤホンのフラッグシップモデルで、昨年発売された『TOUR PRO 2』から、搭載されたドライバーやノイズキャンセリング性能、利便性など多くの面で進化を果たしている。 第一の変更点として、JBLのイヤホンとしては初めてデュアルドライバーを採用した。8kHz~40kHzの高域を受け持つBA(バランスド・アーマチュア)ドライバーと、20Hz~8kHzの低域を受け持つ10mmダイナミックドライバーという構成で、従来モデルに対して飛躍的な音質向上を実現、ライブ感あふれるサウンドを獲得したそうだ。 さらにTOURシリーズで初めて、ハイレゾコーデックのLDACに対応した。これにより、対応スマホやデバイスと接続することで最大96kHz/24ビットのサウンドを伝送可能になった。これは今年6月に発売された『LIVE BEAM 3』に続いてのことで、日本のユーザーからLDAC対応を望む声が多かったのも一因のようだ。 ■スマート電源ケースに、トランスミッター機能も追加 アクティブノイズキャンセリング機能も進化し、周囲の環境に合わせて効果を補正するフィルター処理が強化されている。あらゆる形状の外耳道と装着状態にも適応することで、一人ひとりに合わせて、最適かつ最高のアクティブノイズキャンセリング効果を実現するそうだ。 『TOUR PRO 3』では、楽曲の再生や各種設定ができるスマート充電ケースも進化している。まず本体ディスプレイのサイズが『TOUR PRO 2』から約29%アップ、表示項目の識別も容易になった。再生時のBluetoothコーデックが左上に表示されるようになったが、これも日本のユーザーからの要望が多かったとのことだ。 さらにスマート充電ケースはトランスミッター機能も備え、AURACASTを使って複数のデバイスに同時に音楽を配信できる(発売までにソフトウェアアップデートを実施予定)。充電ケースのUSB Type-Cコネクターに携帯音楽プレーヤーやPCをUSB Type-Cケーブル(3.5mmアナログ変換アダプターも付属)で接続し、その音を複数のイヤホン/Bluetoothスピーカーで鳴らすことができる。 ■初期設定は専用アプリ「JBL Headphones」で簡単に さて今回、『TOUR PRO 3』の取材機を借用できたので、いろいろなシチュエーションで音を確認してみた。まず専用アプリ「JBL Headphones」をインストールしたGoogle Pixel 6とつないで、設定をスタート。装着状態の確認や、ノイズキャンセリングのオン/オフや効果の強さといった設定もここから行える。ちなみにBluetoothコーデックのLDACを使うか否かもアプリから行う仕組みで、LDAC/オンにすると、空間サウンドや音漏れの補正などのいくつかの機能が動作しなくなる。 ■『TOUR PRO 3』はLDAC伝送で使うのがオススメ 続いてPixel6で楽曲を再生する。最初は『TOUR PRO 3』をLDAC/オフ(ここでのコーデックはSBC)にセットした。ボブ・ディラン「Full Moon And Empty Arms」や山下達郎「LOVE’S ON FIRE」を聴いてみると、バランスのいい音が再現される。ただ全体的にダイナミックレンジが狭く、高域も控えめ。せっかくBAドライバーを搭載したのだから、もう少し伸びやかさが欲しいという気もする。 そこでLADC/オンに切り替えて同じ曲を再生すると、当然ながら印象が大きく変化する。音量感がアップし、高域も自然に伸びてきて、これならBAドライバーの恩恵も感じ取れる。結果として、声や楽器の実体感も出てきた。この違いは顕著なので、再生機側が対応しているのであれば、『TOUR PRO 3』はLDAC/オンで使うことをオススメしたい。 続いてストリーミングのAmazon Music HDからYOASOBI「夜に駆ける」を再生した(LDAC/オン)。「夜に駆ける」は360 Reality Audioの音源も配信されており、それもあってか音が前後左右に自在に定位して聴こえる。 楽曲のアレンジの狙い、空間オーディオの音作りを正確に再現してくれるわけで、これはとても楽しい。ikuraの声も明瞭で、情報が少し整理されるところはあるが、音楽鑑賞として不満はない。『TOUR PRO 3』なら、ストリーミングは当然として、空間オーディオも魅力たっぷりに楽しめるのは間違いない。 ■トランスミッター機能で再生した音が、予想以上にいい もうひとつ、スマート充電ケースのトランスミッター機能も試してみた。ソニーのウォークマンとUSB-Cケーブルでつなぐと、『TOUR PRO 3』のディスプレイに「USBオーディオ」と表示され、外部入力した音源を再生していることがわかる。 そのまま、ウォークマンに保存したマイケル・ジャクソン「Beat It」や宇多田ヒカル「First Love(2014 Remastered Album)」を再生する。なおUSB-Cでつなぐとスマート充電ケースから再生操作はできなくなるので、操作はウォークマン側で行っている。 この接続の音も、予想以上によかった。「Beat It」のドラムやギターの低音が豊かで、マイケルの声にも力強さが感じられる。「First Love」も宇多田ヒカルの声が綺麗で、低音成分もしっかり入っていることに気付かされた。いずれの曲もS/Nがよく、音楽以外の暗騒音、ノイズが感じられないのも素晴らしい。 リリースによるとUSBオーディオで再生した場合は、スマート充電ケースとイヤホンの間は2.4GHz無線伝送されるようで、伝送方式による差もあるのかもしれない(充電ケースのコーデック表示も消える)。 そこでウォークマンとLDACで接続しなおして同じ曲を聴いてみたが、これは甲乙つけがたい。「First Love」のドラムなどは、USBオーディオ(無線伝送)の方がより低音感が得られるようになるので、迫力を求める方には好まれそうだ。このあたりは好みで使い分けていいレベルだと思う。 ■毎日持ち歩く高音質なイヤホンとして、最適 今回の取材はアダプティブノイズキャンセリングをオン、イコライザーはオフの状態で行っている。ノイズキャンセリングの効果も明瞭で、電車の中での暗騒音や乗客の会話もうまく抑えてくれる。音質への影響もほとんど気にならなかった。 短時間ながら『TOUR PRO 3』を試用して、スマホに保存したハイレゾファイルからストリーミング、トランスミッターとしての再生のすべてで、JBLらしい低域の豊かさを備えた、安定感のあるサウンドを楽しむことができた。どの使い方でも音楽を聴く楽しみを感じさせてくれる、毎日持って歩きたい完全ワイヤレスイヤホンだ。
出水哲