GLAY「HOWEVER」に影響を与えた、安室奈美恵の意外な名曲とは?
当時、多くのアーティストのプロデュースを手掛け、ヒット曲を量産していた小室哲哉は、GLAYにとって、とても大きな存在だったのです。 ● 小室哲哉プロデュースのイントロ秒数から 1990年代のヒット曲を考察 1990年代のJ-POPシーンは、小室哲哉がプロデュースを手掛けた楽曲がシングルチャートの上位を独占し、大きなムーヴメントを巻き起こしました。 海外で体感したダンスミュージックを日本のマーケットの最前線に当てはめたサウンドで、ヒット曲を生み出していくそのスタイルは“TKサウンド”と呼ばれ、当時の若者を中心に熱狂的な支持を集め、100万枚を超えるミリオンヒットを20曲輩出しました。 そんな90年代を代表する“TKサウンド”を、イントロという切り口で分析してみます。 1993年~99年に小室哲哉氏がプロデュースを手掛けヒットした、50曲のイントロ秒数を調査しました。(※編集部注:調査した50曲は記事末尾に掲載) その結果がこちらです。 全体の40%(20曲)のイントロ秒数が20秒以上、32%(16曲)がイントロ0秒か、1~9秒。 「3曲に1曲が、イントロ秒数が極端に長いか、極端に短い曲」という、とても際立った特徴が出る結果になりました。 私は、小室哲哉氏がファンコミュニティ『TETSUYA KOMURO STUDIO』で配信している番組「TK FRIDAY」にゲストで出演し、小室氏に直接この結果になったこと、そしてこの結果には理由があるのかを質問したことがあります。
実は、これには明確な理由がありました。下記はその時、小室氏が語ってくれたインタビューの抜粋です。 >まず、イントロが短い曲ですが、これはCMなどタイアップありきで作った曲がほとんどだと思います。まずCMで流れるところを作って、じゃあ曲にしようって時に、CMで流れるところを歌い出しですぐに聴かせる構成にしたことで、イントロは無しとか、数秒だけイントロを加えて、CMで流れてるメロディに勢いをつけて効果的に聴かせるように作ってましたね。 >『シーブリーズ』のCMソングに決まっていた、安室奈美恵さんの「You're my sunshine」って曲は、はじめ、アップテンポなサウンドで作ってたのですが、クライアントからリゾート気分を味わえるようなゆっくりとしたテンポにしてほしいと、後から言われて。で、イントロ2秒からゆっくりとしたテンポのサビがくるように作り直して、途中からテンポアップするアレンジにしたんです。そういう曲もあるくらい、イントロが短い曲は、タイアップありきだったってことが大きいですね。 >逆にイントロが長い曲は、自分で歌う曲ではなく誰かのプロデュースをする曲が多かったので、アイデンティティというか、自己欲求というか、ダンスミュージックですけど、私はロックも好きですよとか、自分の一番やりたいことや好きなことをイントロに詰め込んでいたというのは、かなりありましたね。それで長くなったんじゃないかな。 90年代の日本の音楽シーンは、CMやドラマのタイアップという宣伝方法が多用されていた時代でした。 新しい楽曲を世に広めるための効果的な手段として戦略的に取り入れながらも、ミュージシャンとして表現したいことはしっかりと作品の中に落とし込む。そのバランス感覚こそが“TKサウンド”がこの時代に成功した大きな要因の一つだったのです。 そしてこの“TKサウンドメソッド”は、他のミュージシャンにも多大な影響を与えることに。GLAYが1997年にリリースし、134万枚のミリオンヒットを記録した「HOWEVER」は、この“TKサウンドメソッド”から誕生した曲だったのです。