〈詳報〉屋久島沖オスプレイ墜落 米空軍が事故調査報告書を公表 左ローター変速機破損し動力伝達に急激な不具合 異常知らせる警告が複数回点灯するも飛行継続「搭乗員の危機意識不十分だった」
屋久島沖で昨年11月、米空軍の輸送機CV22オスプレイが墜落し搭乗の8人全員が死亡した事故で、米空軍特殊作戦司令部は2日、左ローターのギアボックスと呼ばれる変速機が破損し、動力システムの不具合が急激に生じたとする事故調査報告書を公表した。警告灯が複数回点灯したにもかかわらず、予防着陸しなかった操縦士の意思決定も原因と結論付けた。 【写真】墜落したオスプレイの飛行ルート
エンジンの動力をローターに伝える「プロップローター・ギアボックス(PRGB)」内で、五つのギアのうち一つが破断するなどし、動力を伝達することができなくなった。防衛省によると、PRGBの破損で事故につながったケースは今回が初めて。 PRGBでは、ギアが高速回転しているため、部品が摩耗して金属片が発生する場合がある。金属片の発生を知らせる警告灯が3回表示され、マニュアル上は速やかな着陸を検討する状況になったが、搭乗員で検討した形跡はなかった。その時点で最寄りの海上自衛隊鹿屋航空基地に着陸せずに操縦士は飛行を続けた。 事態が悪化した後も、着陸可能な三島村黒島や硫黄島など近くの離島ではなく屋久島空港に着陸しようとした。操縦士は同空港へ着陸を求めたが、空港運用担当者が確認するまで「緊急事態」を申告しなかった。 事故機は当時、別機との演習中だった。報告書は、操縦士が機長と機上任務指揮官を兼務したり、PRGBが故障した場合のリスク認識が甘かったりしたことが事故につながったと指摘。「搭乗員の危機意識が不十分だった」とした。九州防衛局の職員が同日、屋久島町の屋久島漁協や同町、県庁、鹿屋市を訪れ、米軍の調査結果を報告した。
事故は昨年11月29日に発生。横田基地(東京)所属のCV22が、岩国基地(山口)から嘉手納基地(沖縄)に向かう途中で屋久島の東約2キロに墜落した。米軍と陸上自衛隊は事故後、オスプレイの飛行を見合わせた。今年3月、対策を講じて安全に運用できるめどが立ったとして飛行を再開した。
南日本新聞 | 鹿児島