厩舎関係者も「知らなかったよ!」と驚き まるで双子のような2頭が今週の福島でデビュー/新人記者のトレセン日記
新人記者・栗栖歩乃花のトレセン日記
先週は上原佑紀調教師が管理する新馬を取材したので、今週はお父さんの上原博之調教師の厩舎にいる新馬について聞いてみました。仲良く福島でデビュー予定のピコブルー(日曜芝2000メートル)とクレプスクルム(土曜芝1800メートル)です。 この2頭に注目したきっかけは、厩舎関係者も「知らなかったよ!」と驚くブルーくんとクレプくんの共通点。それは、生年月日が同じ2022年2月26日生まれなこと。そんな2頭が同じ厩舎から同じ週に福島でデビューするなんて運命を感じますよね。牡馬同士ということもあって練習も一緒にしている仲良しだそう。でもちょっぴり違うところもあります。それは性格です。 ブルーくんは「穏やかですね。まだまだ新馬なので『僕はまだ職業が分からない!』という感じはあります」と担当の圓谷厩務員は言います。でも「人間と同じように個性があるので、何がいいとか悪いとかではないですからね」とその個性に寄り添いながら大切に育てられていました。 一方、クレプくんはどうなのでしょうか。担当の門田厩務員は「変わってます! おとなしいところもあるんですけど、不思議なところもあるんですよ。体を触られるのが好きじゃなかったり」。上原博師が「元気な兄ちゃん」と言うのでクレプくんのほうがちょっとヤンチャなのかもしれないですね。
上原博調教師の〝見極め〟
では、新馬を育てるにあたってのこだわりはあるのでしょうか。取材を続けてみると、優しい笑顔の裏に隠された、ベテラン調教師の鋭い「見極め」がデビューへのカギになっていることが分かりました。 まず入厩すると、トレセンの調教に耐えられるのか見るそうです。「坂路やウッドを走ってみて、楽に動けたり走れるかを見ているよ」と育成場とは違った環境の訓練に耐性があるのかチェックします。「それで大丈夫そうであればゲート試験に、もう少し鍛えてもらう必要があれば放牧だね」と、すぐにゲートの練習をするのではないようです。 そのゲート試験についても「先に追い切りをしないようにしているよ。追い切りをして気合が乗っている状態だったり、苦しい思いを先にさせないように」とのこと。合格後は「ゲート練習でストレスがたまっていると思うので、リラックスさせて次の週から追い切りを始めるよ」としっかり休ませてから追い切りのステップに進んでいるようです。 追い切りが始まると、ここでも見極めが必要です。「1~2本追い切りをしてみて、続けても大丈夫そうならレースに行くし、力がなかったり、精神的にまいっているようだったら放牧に出しているね」。様々な段階を踏みながらデビューに向けて準備をしているのがよく分かります。 同じ厩舎で育ち、同じ日に生まれた、まるで双子のような2頭は、そんな上原博調教師のチェックをクリア、晴れて福島でデビューとなります。仲良く勝利を飾れるのか、目が離せません。
栗栖 歩乃花