町田・黒田監督がロッカールームで作り出す「悲劇感」 首位ターンの舞台裏「隙を作らせない」【コラム】
昌子の古巣・鹿島とは最終節で対戦…後半戦で優勝争いの行方は
4月の神戸戦でベンチ入りするも、リザーブのまま敗戦を見届けた昌子が言う。 「後半戦はいきなり神戸とガンバで、前半戦でいえば神戸には負けていて、ガンバとは開幕戦で引き分けている。その前半戦で僕らが首位で折り返した勢いといったものは全く関係なく、もう一度新たな気持ちでしっかりと挑まないといけない。順位的にも2チームは優勝争いをしていく上で強力なライバルになるし、中3日で続くし、いずれもアウェーですけど、しっかりと勝てるように準備していきたい」 特に4月の神戸戦では、U-23日本代表に招集されたMF平河悠とFW藤尾翔太が不在で、守護神・谷晃生が出場停止だった。彼らが全員揃う一方で、DFチャン・ミンギュら筑波大学との天皇杯2回戦で負傷した4人、そして韓国代表での活動中に怪我をしたFWオ・セフンらの出場は微妙。いずれにしても総力戦になる。 さらに2巡目の戦いとなる後半戦は、これ以上は町田に首位を走らせてなるものかと、各チームのマークが厳しくなるだろうし、プロの意地にかけて何らかの対策も講じてくるだろう。昌子も気持ちを引き締める。 「もちろん町田が求めるサッカーを、なかなかやらせてくれない試合もある。それでも最低で勝ち点1を、優勝争いを続けるのであれば勝ち点3を取れるようなチームにしていかないといけない。順位表のトップ5に限らず、上位につけているチームは、そういう試合でも勝ち点3をもってこられるチームばかりなので」 後半戦の試合日程を追っていくと、昌子にとって、運命に導かれたようなカードが12月8日の最終節に待っている。現時点で2位につける古巣・鹿島アントラーズと、敵地・県立カシマサッカースタジアムで対峙する。 「そこはまだ考えたくないというか、もう少し近くなったときに、順位がどうなっているのかもあるので」 鹿島との優勝争いを問う質問を、やんわりとかわした昌子は一方でこんな言葉を紡いでいる。 「1つだけ言えるのは、やはり(優勝争いから)離脱したくはないですよね。同じ相手に2度勝てるほど後半戦は甘い世界ではないし、もしかしたら初めて連敗を喫するかもしれないし、簡単にはいかないとわかってはいるけれども、それでも2位になろうが3位になろうが、最終節まで優勝争いを続けていきたい」 ホームに鹿島を迎えた3月の第3節では、平河のゴールを守り抜いた町田が1-0で勝利するも、初めてベンチ入りした昌子に出番は訪れなかった。果たして昌子を、そして町田をどのようなドラマが待っているのか。J2から昇格して即優勝したのは2011シーズンの柏レイソルだけ。初めてJ1に昇格したチームの即優勝となると、当然ながら前例がない。首位ターンした町田が「悲劇感」を共有しながら、残り19試合で歴史的な偉業に挑む。 [著者プロフィール] 藤江直人(ふじえ・なおと)/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。
(藤江直人 / Fujie Naoto)