買い替えは「覚悟を決めて」…専門家でも“冷や汗もの”なマンションの「購入」と「売却」気をつけたいポイント
「買い先行」は資金に余裕がある人向け
次に、新居の購入契約を締結してから、いまのマンションを売りに出す「買い先行」は、いまのマンションの住宅ローンが完済済みの人や、新居を退職金などの自己資金で買う予定など、資金計画に余裕がある人に向いている。 新居が建築中など引き渡しまでに時間がある場合や、新居で新たに住宅ローンを組もうと思っているなど、買い先行のほうが良い場合もある。また、いまのマンションが人気物件ですぐ売却できそうなら、新居が決まり次第すぐに売却が可能なため、買い先行もありだ。 買い先行は、焦らず納得するまで新居を探すことができ、欲しい物件が売りに出た際もタイミングを逃さずに購入できる。仮住まいに移る必要もないので、引っ越しも1回で済む。新居に引っ越しすれば、旧マンションを空き部屋にできる。空き部屋ならモデルルームのようにステージングしたり、購入希望者の内見もしやすく売却もしやすい。 高値で売れない場合、大惨事になるリスクも 一方で売り急ぎで不本意な値下げに応じたり、いまのマンションの住宅ローンが残っており、新居でも住宅ローンを予定しているなら、旧居と新居の二重ローンになってしまう。そもそも旧ローンがあると新居の住宅ローン審査に通らなかったり、通ったとしても金利などの融資条件が悪くなることも考えられる。 さらに旧マンションが思ったほど高く売れない場合、資金面で大惨事になる可能性もある。やはり「買い先行」が向いているのは、いまのマンションが人気物件か、資金に余裕がある人だろう。
なかなか売れず、ローンを組むはめに…筆者も「買い先行」で冷や汗
余談だが、私が買い替えをした際は、買い先行にした。新居が建築中で入居まで数年と時間があったこと、旧宅も駅近のデザイナーズマンションで築8年とギリギリ築浅と呼べる物件だったこと、頭金を多く入れ住宅ローンも完済済みであったからだ。 しかし、住みながらの売却は、内見時に掃除や貴重品の管理などに神経を使い、内見に立ち会う場合は、購入検討者と顔をあわせることが、とても苦痛であった。しかも売り出し価格が強気だったからか、なかなか売れず、とうとう新居の引き渡し時期になり、売却資金をそのまま新居の購入にあてる予定が、住宅ローンを組むはめになってしまった。 まさか売れないとは思っておらず、デベロッパーとの契約に「買い替え特約(購入者の所有物件が期限までに売れない場合、契約が解除でき、手付金も戻る。無料でできる)」や「住宅ローン特約(ローン審査に通らない場合、契約が解除でき、手付金も戻る。無料でできる)」の条項を入れておらず、住宅ローン審査に通らない場合、数百万円の頭金(手付金)は戻らず契約も解除されるかもと、生きた心地がしない経験をしたことがある。 デベロッパー紹介の金融機関も足元を見たのか、高い金利や不利な条件提示が相次ぎとても屈辱的だったのを覚えている。 結局、日頃から取引のある大手金融機関とフラット35を取り扱う金融機関の審査に通り、難を逃れたのだが、専門家の私でも買い替えは冷や汗ものだった。 私が所有していたマンションの場合、立地も内装も気に入ったが、登記簿面積でギリギリ50m2を満たさず※、住宅ローン控除(減税)が使えないことがネックだと言われたこと、ちょうど管理会社が変更されたこともあり、管理状況が不安だと言われたことも何度かあった。ようやく新居に引っ越してから数ヵ月後に住宅ローン控除も関係ない、外国籍の人に売却できた。 ※現在は、適用要件に応じて40㎡以上に対象床面積が緩和されている。 マンションは立地だけでなく「管理」も重要 私の経験から言えることは、マンションは立地だけではなく管理も重要だ。 マンションなど住宅は、買うのも大変だが、売るのはもっと大変。買い替えは買うと売るが同時にくるため、覚悟を決めて取りかかって欲しい。幸せになるための買い替えが老後破産を招いたのでは洒落にもならない。 日下部 理絵 マンショントレンド評論家 オフィス・日下部 代表