絶滅種サーベルタイガーDNA分析に初成功 氷河期化石からクローンは可能?
サーベルタイガー(剣歯虎)vs.サーベル「キャット」
氷河期時代のサーベルタイガーと一般に呼ばれるものはいくつか知られている。すべて食肉目(Carnivora)のネコ科(Felidae)の中でも「マカイロドゥス亜科(Machairodontinae)」という絶滅した一系統に属す(トータルで19属近く知られている)。ちょうどライオンやトラを含む「ヒョウ亜科(Pantherinae)」と「イエネコ系統(=ネコ亜科:Felinae)」の中間にあたる(こちらの記事にネコ科系統樹の説明あり)が、より後者に近いと考えられている。
そのため「タイガー(トラ)」という名で呼ぶのは、厳密にいえば間違いということになる。ちなみに英語では「Saber-toothed Cat」と一般に表記されることが多い。「ねこ」や「猫」ではなく「ネコ」の言葉が使われているようだ。 しかし言葉のあやというのは、非常に大事なものだ。マカイロドゥス亜科に属す種を「サーベルネコ」と呼んではその神秘性も魅力も半減しかねない。そのためこの記事では「サーベルタイガー」の名で押し通すことにする。(猫愛好家の方、どうかご了承ください。)念のためにもう一度あえて繰り返しておきたい。サーベルタイガーはトラの仲間ではない。ネコ科に属し、中新世前期(約2300万年前)に現れ、氷河期の終わり頃(約1万1000年前)に絶滅した大型哺乳類の一グループを指す。 ちなみに哺乳類の進化上、剣歯(注:長い上あごの犬歯;Saber-toothと一般に呼ばれる)をもった種は、約2.6億年前のペルム紀後期の原始的な哺乳類の祖先にあたる動物において、はじめてみられる。以来、化石記録によると、少なくとも「トータルで7回」、進化上、それぞれ独自に現れていることが知られている。(注:そのためこれらのグループは、剣歯をもっているもののまるで異なる哺乳類やその先祖にあたる系統に属すと考えられている。) 参考までに主なモノを年代順に並べておく(一番古いグループを上から)。 (1st) 単弓綱(Synapsida) ── ゴルゴノプス(Gorgonops):ペルム紀後期(約2.6億年前) (2nd) デルタテリディウム目(Deltatheroida:非常に初期の後獣下綱に属し初期有袋類の近縁グループ) ── Lotheridium等:白亜紀後期 (3rd) ティラコスミルス科(Thylacosmilidae) ── ティラコスミルス(Thylacosmilus)等:中新世後期から鮮新世後期(約700万年前―300万年前) (4th) 肉歯目(Creodonta)オキシアエナ科(Oxyaenidae) ── Oxyaena、Machaeroides等:暁新世―始新世 (5th) ネコ亜目(Feliformia)ニムラブス科(Nimravidae) ── ニムラブス (Nimravus)、ホプロフォネウス(Hoplophoneus)等:始新世中期―中新世後期(約4000万年―700万年前) (6th) ネコ亜目(Feliformia)バルボウロフェリス科(Barbourofelidae) ── バルボウロフェリス(Barbourofelis):中新世中期(約1900万年―900万年前) 注:こちらにイメージ等いくつかあり()。 そして今回紹介する「サーベルタイガー」は、一番最後(7番目)のグループにあたる。先に述べたようにネコ科(Felidae)に属する(注:より原始的なネコ亜目Feliformiaではない)。中新世前期から更新世まで、約2300万年前から1万1000年前の地層において化石が知られている。その分布範囲はヨーロッパ全域から南北アメリカ大陸に及ぶ。