田口世界戦で異例のダウン巡るミスジャッジ。王座陥落に影響は?陣営抗議へ
3年5か月保持したベルトを失った。WBAの王座は防衛に成功すればV8だった。 「年内に10度防衛を達成したかった。9度目の防衛戦は9月にお願いしますと会長に話をしていた」 大晦日に区切りのV10を果たす計画を練っていた。 ジムの大先輩の内山高志は、WBA世界スーパーフェザー級王座を12度目の防衛で失敗。WBC世界バンタム級王者の山中慎介(帝拳)は13度目の防衛戦で禁止薬物疑惑のルイス・ネリ(メキシコ)に敗れた。 「内山さんも山中さんも12回、13回でね。だから10回を超えてからは、1回、1回という気持ちで臨みたい」 偉大なる先駆者が果たせなかった具志堅用高氏の持つ13度の連続防衛記録に並ぶとき、彼が口癖のように言う「誰もが認める強いチャンプとして評価される」瞬間となるはずだった。 だが、その夢も老獪なブドラーのボクシングに翻弄されている間に消えてしまうことになった。失ったモチベーション。後に残るのは途方もない絶望感だろう。 「残念のひとことに尽きます」 この日、1000人を超えるファンが田口のチケットを買ってくれた。31歳の独身のつよかわ系世界王者を必死に応援する女性ファンの姿も目だっていた。だからこそ生真面目な田口はなおさら責任を感じていた。 だが、田口に再起の道は残っている。 WBAにはオプションがあるため、ワタナベ陣営のWBAへの抗議が功を奏し、もしブドラーがIBFだけを保持してWBAの王座を返上すれば、WBAの王座決定戦となり、田口が、そこに抜擢される可能性もある。また、そうでなくともブドラーとの再戦チャンスも残っている。 「もう一度やれば? 正直、その時のコンディション次第です。調子がよければ勝てるとは感じます。両方ですね、勝つ可能性も負ける可能性もある。再戦? そういう話が出たら考えます」 31歳。ボクサー田口の心の火は消えていない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)