田口世界戦で異例のダウン巡るミスジャッジ。王座陥落に影響は?陣営抗議へ
序盤はブトラーの巧妙な戦略にしてやられた。 「田口はスロースターターだから序盤にポイントを貯金しておこうと考えたんだ。それがうまくいった」 ビデオを研究されパターンを読まれていた。本来、田口は体格の優位差を生かした左ジャブで突き放し、距離とステップワークでペースを奪わねばならなかったが、インファイトに巻き込まれ、3連発、4連発、5連発の嵐にさらされた。ブドラーはパンチ力はなく手打ちだったが、数を打たれ、巧みなボディワークで体を回しながら田口の反撃を空回りさせていく。3ラウンドまでのポイントを完全に失った。 「1ラウンドから先手、先手でいきたかったが、違う展開になった。本当に強い選手だった」 いつもの統一王者と様子が違っていた。いくらスロースターターだと言ってもエンジンのかかりが遅すぎた。「思いの外、体が動かなくて…。調子がいい時は、直感で動くが、今日は考えながらボクシングをしていた。調子が悪かった。結果論ですが」 4ラウンドには左右のボディを効かされロープを背負うシーンも。クリンチで逃げねばならないくらいだった。「田口コール」が起きたのは5ラウンド。ブドラーがずり下がったトランクスを何度も気にするほど、田口はボディにパンチを集めた。形勢を逆転しかけたように思えたが、そこから先のラウンドへつなげることができない。 「足が動かずに後手後手になった。ジャブからを意識して、それのできるラウンドが増えたが、それでもだめだった。ボディは、相手が声を出すほど効かせただけに、それをもう少し早くできていたらと」 終盤は消耗戦となったが、ブドラーの連打が途切れるラウンドはなかった。 「ガンガンこられたし、ワンツーからのジャブとか、第3のパンチでペースを取られた。そう来るのはわかっていたが、僕の動きが悪くて3発目をもらった」 最後まで田口はブドラーの第3のパンチに苦しめられた。 試合後、ブトラーは右目の下を大きく腫らし、まるで敗者のような傷だらけの顔をしていた。一方、田口は疲れ果ててはいたが、比較的綺麗な顔をしていた。序盤のどこかで1ラウンドでも田口が取っていればタイトルは保持できていたのである。 「もうちょっとできたかなと思う。でも、この日、それができなかった自分がダメ。それは受け入れます」