のろのろ台風10号思わぬ接近 影響長期化に不安高まる農畜産業関係者 苗の避難や豪雨、強風、停電対策急ピッチ
非常に強い台風10号が当初予想より西寄りへ進路を変え、鹿児島県に接近している。県本土の農業関係者は27日、急ピッチで備えを進めた。進行スピードが遅く、暴風や大雨の影響が長引く恐れもあり、「被害が出なければいいが」と口々に不安の声を漏らした。 【写真】収穫を控えるナシに落果防止用のネットをかぶせる神囿勝美さん=27日、さつま町虎居
南さつま市のかせだドームには、植え付け前のピーマン苗入りのコンテナ1400個が次々と運び込まれた。ハウスが倒壊すれば苗が風雨にさらされ傷む恐れがあるため、6戸分の計1万1200本ほどを農家やJA職員ら二十数人が避難させた。農家の相星俊明さん(72)は「ハウスが倒壊したら大惨事。頑丈なドーム内なら安心だが、早く通り過ぎて」と祈る。 台風10号の当初予想は、県内を直撃しないコースだった。さつま町のナシ農家、神囿勝美さん(70)は「進路が変わってきたので慌てて作業を始めた。ここ数年は目立った台風被害はないが、今回はどうだろう」と気をもむ。強風でナシ棚のワイヤが大きく振動するのを抑えるため、重し用のブロックを結びつけて固定。収穫を控える品種「甘太」約千個分には、落果防止用ネットを一つずつ丁寧にかぶせた。 和牛5600頭を肥育する「うしの中山」(鹿屋市)も、従業員が牛舎周りに設置していた日よけ用ネットの固定を進め強風に備えた。今後は餌がぬれて傷むのを防ごうと、雨がひどくなる前に給餌器を空にするという。
中山辰司副社長(37)は「台風通過中は餌やりも牛舎の様子を見ることもできない。餌を食べられないと牛のストレスになる」と不安視する。今年は猛暑で体調を崩す牛が例年よりも多いほか、日向灘を震源とする8日の地震では驚いてけがをする牛もいた。「肉質維持へ例年以上にしっかりケアをしていかなければ」と気を引き締めた。 台風は29日に県本土へ最接近するとみられる。マルイ農協(出水市)は、水曜定休の食鳥処理場を28日は臨時稼働させて前倒しで処理する予定。また、窓のないウインドレス鶏舎では、停電で空調システムが止まれば暑さや酸欠で鶏が死ぬ恐れがあるため、各農場には発電機のチェックやレンタルを呼びかけた。椎木昭任生産事業部長(52)は「急に進路が変わったので対応に追われている。台風が長引かなければいいが」と話した。
南日本新聞 | 鹿児島