「私たちは怪獣じゃない」...総合格闘家のトランス女性が訴える「チャンス・公正・正義」の必要性
偏見や誹謗中傷の中で
総合格闘技(MMA)のトレーニングを始めたとき、授業料を払えば私のような(心と体の性が一致しない)トランスジェンダーを受け入れるスクールはあったが、クギも刺された。 最初のジムでは、ジムをSNSでタグ付けしないように言われ、女子フェザー級ではなく男子ヘビー級で登録するよう勧められた。別のジムでは男女どちらのトイレを使うつもりかと質問された。 要するに、ジムとしてトランスジェンダーも考慮に入れた方針を定めるつもりはないから、何かトラブルが起きたら自分で個人的に対処しろというわけだ。 女子のセリーヌ・プロボストと対戦した際は、明らかに相手のほうが背も高くリーチも長かったのに、私のほうが有利だと決め付けられた。 私への誹謗中傷の中には、MMAの国際大会のアルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ(UFC)で私より120ポンド(約55キロ)も重い(男子)ヘビー級選手と対戦しろ、というものもあった。 世間一般の意見は、トランスジェンダー、特にトランス女子はおとなしくしていろというものだった。目立つな。性転換なんかするな。あるヘイト運動は潤沢な資金提供を受けて私たちを排除するよう訴える。女性の地位から。スポーツ界から。公の場から。 偏見を持つ人々の権利や利益と私たちのそれに対して、どのようにバランスを保っていくつもりなのかと聞かれるが、そうするつもりはない。 スポーツ界ではトランスジェンダーの女子選手は統計的に少ない。トランスジェンダーの五輪出場が認められた04年以降、トランス女子のメダル獲得はゼロ。出場資格を認められたのは1人きりだ。 私たちは怪獣なんかじゃない。ただの人間だ。相手より「大きな人間」なんて幻影だ。不安や嫌悪感がつくり出すモンスターだ。「大きな人間」になれと言うのならその糧となる愛と受容、チャンスと公正と正義を与えてほしい。
アラナ・マクラフリン(総合格闘家)