【本と名言365】内田百閒|「特にうまい酒は…」
うちだ・ひゃっけん
1889年岡山県岡山市生まれ。本名:榮造。ペンネームは故郷に流れる百閒川から命名。造り酒屋「志保屋」の一人息子として生まれ、父の早逝により酒屋を閉業。上京し東京帝国大学文化大学(現在の東京大学)に入学。夏目漱石に傾倒し門下生となり、鈴木三重吉や芥川龍之介などと知り合う。卒業後、陸軍士官学校、海軍士官学校のドイツ語学教授、法政大学教授に就任。教職と並行して執筆活動を行う。短編小説「冥途」、「山東京伝」などを発表、昭和8(1933)年、随筆集「百鬼園随筆」がベストセラーとなる。乗り物好きが高じて「阿房列車」という紀行随筆が生まれ、愛猫ノラとクルツを描写した「ノラや」「クルやお前か」は名猫随筆として知られる。還暦後は法政大学教授時代の学生らがメンバーとなり、氏の長寿を祝う誕生日会「摩阿陀会(まあだかい)」を毎年開催。会の名は「まだ死なないのかい」の意から由来する。シャレを愛し、文面から滲み出る洒脱なユーモアが時代を超えて愛されている。著書はほかに「旅順入城式」「百鬼園日記帖」「贋作 我輩は猫である」「日没閉門」など多数。1971年没。
photo_Yuki Sonoyama text_Yoko Fujimori illustration_Yoshifumi...