話題の「カスハラ」とは?東京都が全国初の防止条例制定へ!大江麻理子さんが解説
Q 勤め先でカスハラ対策のマニュアルや方針を策定していますか?
26%が勤め先にマニュアルや方針があることを認識。カスハラを受けたことがある人の割合より少ない結果に。「カスハラにあったときに、勤め先に相談できる窓口や人がいますか」という質問には56%が「はい」と回答 ■大江ʼs eyes 勤め先にマニュアルや方針があると答えた人よりも、相談できる窓口や人がいると答えた人数のほうが多かったですね。一方、ほぼ半数の方は相談もできず、然るべき窓口もなかったという状況の深刻さに私は目を奪われました。職場全体で対処できる環境に変えていく必要があると思います
「カスハラ被害の深刻さにやりきれない思い。働く人を守るしくみづくりは社会の急務」
読者アンケートでは過去3年間にカスハラを受けたことのある人は37%。深刻なハラスメントの内容や切実な声が寄せられた。 「言葉を失うようなエピソードの数々を読み、皆さんが大変な目に遭われている状況を目の当たりにして、やりきれない思いでした。カスハラを受けたことが忘れられない傷として残ってしまっているのではないかと思います。その後、生活に影響があった方が半数以上で、ほとんどの方が心身に不調をきたしていました。この健全ではない状況をどうにかしなくてはいけません。働いている人を守るしくみをつくらなければ、この事態は変えられないと思います。企業が毅然とした姿勢を表明し、対策を講じることが急務ですし、それを自治体や国が条例や法律によって裏づけることの重要性を改めて感じました」 26%の人が「勤め先にカスハラ対策の方針やマニュアルがある」と回答。 「周知されていない場合もあるかもしれませんが、もしこのとおりであれば企業の取り組みはより進まなければならないと思います。これ以上はカスハラなので、必ず上司に相談する、といった基準を定めたマニュアルを職場で共有し、従業員が一人で抱え込まないようにすることが必要です。また、客が行きすぎたクレームをしづらく感じるような対策も効果的かもしれません。先日タクシーに乗車したら、『防犯カメラ設置中』と赤く表示された電光掲示板が目に飛び込んできました。『カスタマーサポート業務で、通話録音をするようになってからカスハラが減った』という読者の方の声もありましたから、こうしたしくみづくりも重要ですね」 日本にはお客さまを大事にする文化があるため、客の権利を拡大解釈しすぎている人がいることが問題であると大江さん。 「サービスを受ける側と提供する側に上下関係はなく、人対人であるという基本に立ち返ることが大切だと思います。サービスに対する苦情と相手の尊厳を傷つけることをはき違えてはいけません。今回のアンケートからサービス業に従事する方の苦難が垣間見え、私自身、サービスを受ける側としてこれまで以上に『ありがとう』の気持ちを伝えたいと思いました。カスハラが社会問題として認識され始めた一方で、これだけ多くの人が被害に遭っているというのは、残念な状況であることに変わりはありません。こういった思いをしなくてすむ社会をつくっていくために、これからもっと考えていかなければならないと強く感じました」
大江麻理子 おおえ まりこ●テレビ東京報道局ニュースセンターキャスター。2001年入社。アナウンサーとして幅広い番組にて活躍後、’13年にニューヨーク支局に赴任。’14年春から『WBS(ワールドビジネスサテライト)』のメインキャスターを務める。 撮影/花村克彦〈Ajoite〉 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2024年7月号掲載