トライアウト消滅で危惧されるクビ選手の「ホームレス化」…受験経験のある球界OBが語ったリアルな声
現役ドラフトにシフトチェンジ
トライアウトの結果を踏まえて、改めて入団テストをやってみよう、育成契約で拾ってみよう、というケースはゼロではないが、参加選手は携帯片手に眠れない日々を過ごしても、報われる可能性は極めて低いのだ。 しかも、トライアウトを経て、NPB復帰を目指す戦力外選手の受け皿として期待された、今季から二軍球団として新規参入した新潟オイシックス、静岡くふうハヤテからのNPB復帰選手は今のところゼロである。 プロの目に留まる機会が増えたにもかかわらず、「ドラフト対象の若手選手はともかく、環境的にも一度戦力外になった選手が再び輝きを取り戻すことは難しい」と、セ球団の編成担当は明かす。 実際、今季は元阪神の高山俊、元ソフトバンクの福田秀平ら、一軍で実績のある選手が二軍球団に所属していたが、見向きもされなかった。 「NPB球団の中堅、ベテランクラスの補強の場は、一昨年から導入された現役ドラフトにシフトチェンジしている。ドラフトでは育成選手との契約が増えているし、リハビリ期間中の選手は育成再契約にすることも常態化。球団はすでに多くの選手を抱えているわけで、トライアウトはいよいよ存在意義を失っている」(前出の編成担当) 一方、トライアウトが消滅することで、路頭に迷う選手が続出しかねない、との危惧もある。 トライアウトはアピールの場であると同時に、選手が現役生活に区切りを付け、引退を決断するための「セレモニー」の場でもあった。
プロ人生に踏ん切りを付ける場がなくなる
戦力外通告を受け、コーチやスタッフへの転身を打診されたり、他球団から声がかからない場合、現役を続けるか、引退をするか、日々、決断を迫られる。かつて戦力外通告を受け、トライアウトを経て引退を決断したパ球団の元選手がこう言う。 「トライアウトは自分にとっての『心の落としどころ』なんです。戦力外通告を受けても、クビになった実感はなかなか湧いてこないもの。まだまだ現役でやれる、という気持ちの方が強かったりもします。中にはスパっと引退する選手もいますが、指導者やスタッフで飯を食べられる野球人はごく一握り。戦力外通告を受けた後に、他球団から声がかからないということは、かなり厳しい立場にいることは分かっていても、現役を続けるか、引退するか、踏ん切りを付けるのはとても難しい。僕自身は、トライアウトを受けても、声がかからなければ引退しようと思って受験しました。それで声がかかれば万々歳ですけどね。どちらにせよ、最後の最後に、プロのユニホームを着てプレーすることは、とても大事なことだと思います」 トライアウトが消滅すれば、この元選手のように、プロ野球人生に踏ん切りを付ける場がなくなることを意味する。 「トライアウトでは、全選手の携帯の電話番号がNPBや独立リーグなどの編成担当に配られる。NPB球団は選手の元同僚などを通じて電話番号を取得できるでしょうけど、独立リーグだとそうはいかないケースもある。球団と選手との接点が薄くなることも懸念されます」(前出の選手) トライアウトがなくなれば、新天地を見つけられないばかりか、心の整理もつかずに路頭に迷う選手が増えるかもしれない。 ◇ ◇ ◇ トライアウトに代わり、現役ドラフトの「年2回実施」が現実味を帯びている。いったいどういうことか。いま、球界で何が起きているのか。 ●関連記事【もっと読む】…では、それらについて詳しく報じている。