定年後も働き「月25万円」稼ぐ予定です。収入が多いと「年金の支給が停止される」と聞いたのですが、いくらまでなら問題ないでしょうか?
「定年後もゆとりある生活を送るために、月25万円程度は稼ぎたい」と考えている人もいるのではないでしょうか。定年を迎えた後も、現役当時と変わらず働くことを計画している人も少なからずおり、特に月収25万円という目標は、多くの高齢者が目指す現実的な数字かもしれません。 ▼65歳から70歳まで「月8万円」をアルバイトで稼ぐと、年金はどれだけ増える? しかし、働くことで年金の受給に影響が出ると聞いて、不安に感じる人もいるでしょう。本記事では、在職老齢年金の概要を解説します。
在職老齢年金とは
在職老齢年金制度は、60歳以上の厚生年金加入者が、働きながらも老齢厚生年金を受け取ることができる制度です。この制度は、現役引退後に低賃金で生活が困難となった高齢労働者を支援するものとして誕生し、何度かの改正を経て、現在では現役引退後も報酬のある場合は年金制度を支える側に回ってもらおうという考えに基づいて運用されています。 そのため、年金と賃金の合計が一定の基準額を超えた場合に年金の一部が減額、または全額停止される可能性があります。なおこの制度の対象者は、厚生年金保険に加入している人に限られます。
在職老齢年金の支給停止と計算方法
年金と賃金の合計が年度によって設定される「支給停止調整額」を超えると、在職老齢年金の支給が一部または全部停止されます。2023年度の基準額は48万円でしたが、2024年度からは50万円に引き上げられる予定です。この基準額を超えると、超えた分の半額が年金から差し引かれることになります。ただし、老齢基礎年金には影響がなく、全額支給されます。
在職定時改定制度について解説
在職定時改定制度とは、65歳以上で働きながら年金を受け取る人の年金受給額を毎年見直す制度です。これまで65歳以上で支払った厚生年金保険が反映されるのは退職後でしたが、在職定時改定制度により毎年10月に改定されるため、65歳以降に納付した厚生年金保険料が反映されて年金額が増加する可能性があるのです。
在職老齢年金制度を利用して働くメリットとデメリット
ここでは在職老齢年金制度を利用して働く際のメリットとデメリットをそれぞれ2つずつ紹介します。ぜひ在職老齢年金制度を利用する際の参考にしてみてください。 ■メリット(1)在職定時改定制度により、毎年、老齢厚生年金部分が増える 在職定時改定制度を利用することで、65歳以降に働いて支払った保険料が毎年10月に年金額に反映され、受け取れる年金額が増加する可能性があります。 ■メリット(2)社会保険の保障が継続して受けられる 年金を受給しながらも、働くことで健康保険などへの加入も継続されます。健康保険は企業との労使折半のため保険料の自己負担が軽減されるだけでなく、万が一の際の社会保障の面での保護を受けられます。 ■デメリット(1)受給できるはずの老齢厚生年金がもらえない可能性がある 年金と賃金の合計が年度ごとに定められた支給停止調整額を超えると、超えた分の半額が年金から差し引かれ、実際に受け取れる年金額が減少します。特に、賃金が高い場合は、年金が大きく減額されることもあり得ます。 ■デメリット(2)在職老齢年金が全額停止の場合、加給年金がもらえない 在職老齢年金が全額停止になると、加給年金も同時に全額支給停止となります。加給年金とは、配偶者や子どもなど、被保険者が支える家族に対して支給されるもので、これが停止されると家計に大きな影響を与える可能性があります。