台湾の“バドミントン女王”戴資穎、最後の五輪に涙で別れ「コートに立てただけで満足」
(パリ、台北中央社)台湾で“バドミントン女王”と呼ばれるバドミントン女子シングルスの戴資穎(30)。今年いっぱいでの引退を表明している戴にとってはパリ大会が「生涯最後の五輪」となる。だが今大会は膝の故障を抱えた状態で試合に臨むことになった。予選リーグ突破を懸けた7月31日(現地時間)の最終戦。かねてからの戦友であるタイのラチャノック・インタノンにストレート負けし、予選敗退が決まった。試合後にはインタノンと抱き合い、涙を浮かべながらコートを去った戴。「(けがの影響で)本当は試合に出られないと思っていた。コートに立てただけで満足」と話した。 東京五輪銀メダル、世界ランク3位の戴。バドミントン女王として、メダル獲得に大きな期待が集まっていた。 昨年末に右膝を故障し、回復と悪化を繰り返していた。今年4、5月に傷が悪化し、5月末の大会以降、試合には出ていなかった。膝のけがの他にも故障があり、ここ数カ月は「メンタルはずっと不安定だった。でも私のチームと医師は諦めずに積極的な治療を続けてくれた。だから私ももちろん諦められなかった」と涙ながらに吐露した。 悲願の金メダルには手が届かなかった。戴は「もちろん心残りはある」としつつ、この日のコンディションは故障以来最高だったと明かし、最後の五輪をこのように戦い終えたことでほっとしていると話した。 出発前には多くの人から声援をもらい、金メダル獲得を期待する声が寄せられた。「でも自分は成し得ないと分かっていた。心境は複雑で葛藤もあった」と率直に明かす。「一番感謝しているのは支えてくれた全ての人。納得はしていないけれど、この事実を受け入れないといけない。最後の五輪で少なくともできる限りの力は尽くしたのだから」と前を向いた。 ▽頼総統「お疲れさま」 戴をねぎらう 頼清徳(らいせいとく)総統は31日、フェイスブックを更新し、この日の試合に出場したパリ五輪台湾代表選手の努力をたたえた。 戴について「台湾を一つにする象徴であり続けた」と形容し、「ありがとう。小戴(戴のニックネーム)、本当にお疲れさま」とねぎらった。 (黎建忠、温貴香/編集:名切千絵)